信州大学医学部歯科口腔外科レジデント勉強会
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Department of Dentistry and Oral Surgery, Shinshu University School
of Medicine
2000.11.29 鎌田
めまいを訴える患者の診察で最も大切なことは、第8脳神経以外の神経症状の訴えがあるかどうかの診断である。第8脳神経以外に異常所見があれば、中枢神経障害を強く疑う。患者の訴えるめまいの内容を正確に把握することがめまいへのアプローチの第一歩である。
1,種類・症状
1)回転性めまい
症状:自分自身がグルグルまわったり、周囲がグルグルまわる感じをいう
a.頭痛を伴う場合
小脳出血やクモ膜下出血を疑う。
b.聴覚症状(耳鳴、難聴)を伴う場合
b-1めまいと難聴が同時に発症→突発性難聴
b-2めまいと耳鳴が同時に反復→内耳性めまい
メニエール病は発作の持続時間は1〜2時間
神経血管圧迫症候群は発作は1分以内に消失するc.めまいのみで他の症状がない場合
嘔気、嘔吐はめまいに必ず随伴する症状であり、患者によく説明し安心させる。多くは患者は吐き気があると重大な疾患だと思いこむ。
1.頭位を変換するときのめまい
頭位を変換した後30秒程度でめまいを感じなくなり、めまいを感じない頭位がある場合は良性発作性頭位変換眩暈症
2.一定の頭位のみでめまいと眼振出現
めまいがある一定の頭位で出現し、そのまま持続して減衰しない場合は小脳・脳幹の出血、梗塞、腫瘍が疑われる。
3.数時間〜数週間続くめまいであれば、前庭神経炎を疑う。前庭神経炎はウィルス感染後、数日〜数週間で発症し両側の温度眼振反応が消失する。脳幹梗塞でも同様のめまいを認めることがある。
2)非回転性めまい
a.立ちくらみ
症状:立ち上がった瞬間クラクラしたり、長く立っていて目の前が暗くなる感じをいう
脳幹の一過性虚血(起立性低血圧)。老人では椎骨脳底動脈不全症を疑う。目の前が暗くなるという訴え(眼前暗黒感)は椎骨脳底動脈や後大脳動脈の血流障害による両側視覚野の虚血を意味する。
Schellongテスト:安静時、起立直後、5分後の血圧を測定する。b.浮動性めまい
症状:体がフワフワする感じ、宙に浮いたような感じをいう。
多くは中枢性の平衡障害で、内耳障害は少ないc.動揺性めまい
症状:頭や体がグラグラ揺れている感じや、フラフラする感じで歩くとふらつくこともある。
c-1.薬物によるめまい
耳毒性のあるもの:アミドグリコシド系抗生剤 _消炎剤 _エタクリン酸、フロセミド _サリチル酸剤
耳毒性のないもの:_抗不整脈 _抗けいれん剤 _抗ヒスタミン剤 _降圧剤 _抗パーキンソン剤 _睡眠導入剤 _経口血糖降下剤 _抗生物質 _タバコ・アルコール
c-2.脳幹・小脳梗塞
c-3.聴神経腫瘍
2.治療
1)内耳性のめまい
_生命にかかわるめまいではないことを十分説明し、患者の不安感が和らぐようにする。
_めまいが続く場合は嘔気、嘔吐を伴うので輸液を行う
_経口摂取可能となったら抗めまい薬(メリスロン、セファドール、ドラマミン等)、胃腸機能調整剤(ナウゼリン等)、抗不安薬(セルシン、デパス等)、ステロイドなどの投与を行う。2)椎骨脳底動脈不全症によるめまい
TIAの治療に準じて、梗塞予防のために、抗血小板薬(バファリン、パナルジン)を投与する。
3)メニエル病のめまい発作の急性期
内リンパ水腫の減少を期待してメイロンを静注
3.歯科治療時の注意点
1)良性発作性頭位眩暈症では、頭の位置を動かしたときに一過性にめまい発作を誘発するので、ユニットを後ろに倒す際にはゆっくり倒すなどの注意が必要である。
2)突発性難聴発症直後やメニエル病の発作期には吐き気、嘔吐を伴うことが多く安静が望ましい。
3)めまい発作に意識消失、四肢麻痺や言語障害などを伴う場合には、内耳性めまいではない脳血管障害などの可能性が高く、専門医(脳神経外科、神経内科)に早急に受診させる
<参考文献>
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