信州大学医学部歯科口腔外科レジデント勉強会
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Department of Dentistry and Oral Surgery, Shinshu University School
of Medicine
1999.11.25 上原
冠状動脈の血液循環が悪くなり心筋の活動に必要な酸素を供給できない状態 → 狭心症・心筋梗塞
1.狭心症(angina pectoris)・・・angina(しめつける)、pectoris(胸骨)
冠状動脈・・・心筋を養う血管
動脈硬化・・・血管内膜にコレステロールや老廃物が沈着し血管内腔が狭くなることで、アテローム・石灰化が血管に生じている。また内腔狭窄が75%以上になると、労作時に胸痛発作が出現するようになる。・通常、心機能の増加にともない心筋の酸素需要は増大するが、酸素供給は冠状動脈が拡張し血流を多くすることによりまかなわれる。正常な冠動脈は必要に応じて安静時の3〜4倍の動脈血を供給することができる。冠動脈内腔が狭窄していると労作時に冠血流量を増加できない。
・狭心症発作の誘因(=心仕事量の増加)
ストレス・・・走ること、長風呂・熱い風呂・トイレ・興奮・歯科治療など・心筋虚血時の心電図変化、負荷心電図
心電図変化・・・ST
負荷心電図・・・心電図のST部分が2mm以上下降した場合を陽性とする。・歯科治療と狭心症発作
歯科治療に伴うストレス
↓
交感神経興奮(末梢血管収縮(血圧上昇)・心拍数と心収縮力増加)
↓
心臓の仕事量増加、心筋の酸素需要量増加
↓
心筋虚血 → 狭心症発作・狭心症の重傷度
沒x 狭心症の既往なし
度 走る・坂道歩行・階段上昇などの比較的強い労作で発作出現
。度 歩行などの軽い労作で発作発現
「度 安静時でも発作発現・狭心症の分類
労作性狭心症は冠動脈の器質性狭窄が発作発現の原因で、労作時・ストレス時に発症
冠攣縮性狭心症は冠動脈の攣縮が発作発現の原因、安静時にも発症・抗狭心症薬とその作用
亜硝酸剤・・・・冠血管拡張、末梢血管拡張による心仕事量の軽減
ニトログリセリン(舌下)、ニトロール(舌下、内服、スプレー)
ミリスロール(静注、テープ)、フランドル(テープ)
β遮断剤・・・・運動時の血圧上昇・心拍数の増加を抑制し、心筋酸素需要量を低下させる
インデラル、メインテートなど
Ca拮抗剤・・・心収縮力低下による酸素消費量の低下、全末梢血管抵抗低下
アダラート、ベルヘッサーなど
抗血小板剤・・・血栓形成阻止 パナルジン、バファリン
抗凝固剤・・・・血栓形成阻止 ワーファリン・歯科治療時の狭心症発作の予防
鎮静法・・・笑気吸入鎮静法、静脈内鎮静法
亜硝酸剤の予防投与・・・・ニトログリセリン(錠)・ニトロール(錠・スプレー)
作用発現 3〜5分 薬効の時間 30分
・フランドルテープ・ミリスロールテープ
作用発現 2時間 薬効の時間 8時間・狭心症発作の対処法
ニトログリセリン錠(0.3J)舌下投与と酸素吸入(2〜4P/分)、BP・ECGモニター・狭心症の治療法
経皮的冠動脈形成術(PTCA)・・冠動脈狭窄の非手術的拡大法で、バルーンカテーテルのバルーンの部分を狭窄部に一致させ造影剤を注入し粥状硬化部分を機械的に拡大
冠動脈バイパス手術・・
2.心筋梗塞(myocardial infarction)
冠状動脈の血流が止まってしまったか、もしくは減少したために心筋細胞が壊死に陥った状態。壊死した 心筋は元に戻ることはなく、発作がおさまっても心臓は障害されたままで心機能の低下が生じている。
原因は、動脈硬化が生じ内腔が狭窄している冠状動脈に血栓が形成されるため
・心筋梗塞発症後の心電図経過
心筋梗塞に特徴的な心電図所見は、急性期のST上昇・慢性期の異常Q波・冠性T波で、心筋梗塞による心電図所見は経時的に変化する。
ST上昇・・・発症直後〜数時間後、2日〜1週間経つとSTは基線に近づく
異常Q波・・・発症数時間後〜発症1年後
冠性T波・・・発症2日〜1週間:T波が、対称性上向きや下向きに変化している状態・対処
酸素(2〜4P/分)の投与(虚血心筋への酸素供給を少しでも増すため)
モルフィン 2〜4J 1回静注 (胸痛の軽減・鎮静のため)
→循環器内科にすぐ連絡
3.狭心症と心筋梗塞の臨床症状の違い
胸骨下部の圧迫感・重圧感 胸部を万力でつかんだような痛み
左上腕・頚部・顎
左上腕・頚部・顎
労作・精神的ストレス
なし
2〜10分の安静で痛み消失
安静にしても痛みは消失
舌下投与後1〜2分で痛み消失
舌下投与しても痛み消失しない
締め付けられるような痛み
<参考図書>
心電図の読み方と心臓病 南江堂
内科レジデントマニュアル 医学書院
有病高齢者歯科治療の実例集 クインテッセンス出版
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