信州大学医学部歯科口腔外科レジデント勉強会
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Department of Dentistry and Oral Surgery, Shinshu University School
of Medicine
2000.11.8 張
1,骨格構造
脊柱の上から第7番目までの部位。第1は、環椎、第2は軸椎と呼ばれる。
椎間板 中央に髄核(弾性に富むゲル状の物質)があり周囲を線維輪が取り巻く。
脊柱の動きに従い自由に変形、復元する。衝撃の緩和に役立つ。
2,頸椎疾患
@頚椎ヘルニア:
終板軟骨、骨化した靱帯を含む組織が繊維輪や後縦靱帯を破り椎間孔や脊柱管内に突出、脱出し神経症状を呈する。
症状;肩、頚、上肢のしびれ手指の巧緻障害、進行すると下肢のしびれ、運動障害、歩行障害を起こす。
OPLLよりは予後が良いとされる。
A椎間板変性による頸椎症:
椎間板の変性により頚髄が圧迫され脊髄障害が出現する。
知覚障害、上肢の重い感じ、脱力感、筋萎縮
B後縦靱帯骨化による後縦靱帯骨化症(OPLL):
難治性であり1975年に厚生省の特定疾患とされた。後縦靱帯が厚さを増し、脊柱管内に突出してくる状態になる。
*後縦靱帯:脊柱管の前壁にあり頸椎から仙椎に至るまで椎体と椎間板の後面を覆う2mmの皮膜のこと
症状:しびれ、歩行障害、手指巧緻運動障害、知覚異常、筋力低下
C椎間板及び軟部組織などの弱化による頸椎不安定症
D筋肉疲労が主な原因の頚腕症候群
E全身疾患に伴う頸椎病変(リウマチ(RA)
第一、第二頸椎の前方亜脱臼が多い。RA患者で頚髄症(ミエロパチー)を発症すると予後が悪い。
頚髄症:四肢の知覚痛覚の低下、重症になると歩行不可となる
F外傷
致命的であるが生存した場合、神経麻痺の合併が以外に少ない。
局所症状として、呼吸障害、嚥下障害、運動麻痺など
G上位頸椎の先天異常
不安定な歩行、首が太く短いなどの特徴を有する。
頭蓋底陥入
軸椎歯突起形成異常:首の屈曲、進展時に環軸椎間に不安定な動きがある。 → *症状が智歯の抜歯後に出現することがある。
H斜頚
頭部が体幹に対して斜めに固定されるもの。
I胸郭出口症候群
胸郭出口部において腕神経叢、鎖骨下動静脈が刺激され頚部、腕、肩だるさなどの障害がでる。
3,治療
保存療法
牽引、頚部の安静固定(可動域制限)、薬剤投与(ステロイドなど)
手術
頭蓋底陥入症などの手術では口腔内から軟口蓋を切除するため口腔内を清潔に保つことが重要。術後2ヶ月〜6ヶ月ほどハロージャケットを装着する。
4,日常生活の注意点
◎ 前屈みの姿勢をとると頸椎の前湾が増加し障害が生じやすい。
腹筋、背筋の筋力増加、頚腰部の短縮した背筋や靱帯の伸張を行う運動を行う。◎ ベットは硬く、枕は柔らかいものを使用。腹臥位は避ける。
◎ 仕事、読書、テレビなどは頚部を進展するような姿勢を長時間とらない。
◎ 重いものは持たない。
◎ 上肢を高くあげて仕事をしない。
5,歯科診療時の注意点
☆急に頭を動かすことは避ける。
可動域の制限がある時
@急性期はの時は一週間ぐらい伸展位をとるのが困難。治療は対症治療か延期する。
A慢性期は治療してもよいが、伸展位を強くすると上肢の放散痛、しびれがおきることがあるため頭部の位置を注意して決める。
B慢性関節リウマチにおいて重症だと突然の呼吸停止がおきる。関節の変形や現病歴をよく問診しておく。また開口障害が多くみられる。
神経症状があるとき
神経症状が以下の3つに分類される。
@頸椎周辺の痛みを主体とするものー臨床では一番多い。
A頸椎から上肢への痛みしびれがあるもの。
B巧緻障害と歩行障害がある脊髄型症◎ 頸椎の位置により症状が憎悪することがあるので症状がでる頭の位置は避けること。
◎ 巧緻障害の調べ方ム両肘を90℃近くに曲げ両手をくるくると回転させる。治療中、急な呼吸困難、しびれがでたときは頭部頚部を動かさず、担当医もしくは救急車を呼ぶ
服薬をしてると思われる薬
◎ 非ステロイド性消炎鎮痛剤
◎ ビタミン剤(メチコバール、ユベラN)
◎ 血行改善剤(ヘクサニッシト、ユークリダン)
◎ 筋弛緩剤(ミオナール、リンラキサー、テルネリン)
◎ マイナートランキライザーなどの抗精神薬(デパス、セルシン)
◎ ステロイド剤
<参考文献>
頸椎、胸椎、胸郭 メジカルビュー社
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