信州大学医学部歯科口腔外科レジデント勉強会

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Department of Dentistry and Oral Surgery, Shinshu University School of Medicine


             
歯槽骨骨折               1999.2.24 澤柳

 歯槽骨骨折は、歯槽突起に限局した顎骨骨折で、歯および歯槽に加わる外力により生じる。

<症状>

 出血:開放性骨折では常に見られるが、閉鎖性のものでも内出血(骨膜下、粘膜下)が見られる。

 疼痛:自発痛、骨片の移動や歯の挺出による咬合痛、骨折線に沿う圧痛。

 腫脹:出血、透過性の亢進

 歯槽骨変位、可動性:複数歯が一塊として動く、歯槽堤部の変位

 歯の症状:歯の挺出、陥入、動揺、脱落、破折、亜脱臼

 機能障害:疼痛による発音障害、咀嚼障害

<診断>

 臨床所見に加え、X線所見からも診断を行う。

 X線の主線が骨折面に平行な場合、明確にフィルム上に現れる(歯槽壁や白線の連続性に留意)。そうでない場合、複数方向から立体的に撮影する。

 パノラマ、オクルーザル、デンタル etc...

<処置>

 受傷後、できるだけ早く処置することが大事。

 外傷歯の保存に重点を置き、脱臼・脱落歯と同時に骨折部を整復し、適切な固定を行う。

 @骨折部の整復:

  開放創が無い場合は徒手整復し固定。

  観血的処置の場合、粘膜断列部を切開部とする。

  骨片が完全に遊離するような剥離をしない。

  壊死組織、血餅、整復の障害となる小骨片や異物は掻爬、除去し生食水でよく洗浄する。外傷歯の処置を行う。

 A整復、固定

  徒手により骨片、歯を整復した後、これを確実に保持するため固定を行う。

   ・歯を用いた固定(非観血的)
     接着性レジンによる固定、ダイレクトボンディング法

   ・骨片の直接固定(観血的)
     骨縫合法、囲繞結紮、プレート固定

   固定期間は骨折部癒着の為に4週間は必要。

 B予後

  骨折部の癒着不全や二次感染の有無、機能障害の回復などの予後観察を行う。
  固定を撤去した後も長期にわたり観察を行う。

 

<小児の外傷>

 小児の場合に問題となることは、整復後の固定源が求められないこと。

 隣在歯に固定源が求められない場合は、後方大臼歯を固定源とした舌側弧線固定法や床副子固定法、また開放創として整復し囲繞固定を行う。

 プレート固定は永久歯胚、萌出途上の歯に影響を及ぼすため行わない。

 また固定期間中の齲蝕予防に注意をする。

 

          参考文献:スタンダード小手術(デンタルダイアモンド社)

               顎口腔の小外科(医歯薬出版)

               小児歯科学テキスト(デンタルフォーラム)


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