信州大学医学部歯科口腔外科レジデント勉強会
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Department of Dentistry and Oral Surgery, Shinshu University School
of Medicine
1999.10.13 上原
褥瘡とは、皮膚や皮下組織を栄養する血管やリンパ組織がベッドなどの硬い面と骨との間で圧迫され閉鎖すること(=循環障害)によって生じる細胞の代謝障害・壊死である。
・皮膚を栄養する毛細血管の血圧は25〜32mmHgで、この毛細血管圧より高い圧が2時間以上あるいは繰り返し加わることにより組織の非可逆的変化が生じる。
・圧円錐:接地部皮膚を頂点として骨に向かって広がる円錐形の範囲に圧がかる(下図)。骨に接する筋肉の部分で最高の圧になる。
・虚血に対する組織耐久性は皮膚に比べて筋肉のほうが低いので、皮膚の変化は筋肉の壊死による二次的な変化と考えたほうが良い。
1.褥瘡の発生要因
a)物理的因子・・・局所圧迫による循環障害。圧迫がなければ褥瘡はできない
b)内的因子・・・・低栄養・高齢による組織の脆弱、脱水、動脈硬化、心疾患による血流障害
*発汗・失禁・創滲出液・テープによる密閉による皮膚の過度の湿潤は、組織の耐久性の低下・細菌増殖の助長を促し、褥瘡は拡大する。
2.褥瘡の好発部位(図)
3.褥瘡の予防と悪化防止・・・原因の除去(除圧)が基本である。
a)体位変換・・・2時間毎の体位変換が原則である。
・仙骨部・・・大転子部の褥瘡では枕を用いて15〜30度の斜位を取らせできるだけ殿筋部で加重させる。
・踵骨部の褥瘡には下肢全体を枕で挙上させ踵を宙に浮かせる。b)感染予防・・・入浴・シャワー浴をできるだけ行わせるように心がける。それらが不可能な場合は、1日1回は清拭を行う。ベッドのシーツやおむつは通気性のよいものを使う。
C)栄養・・・・・低栄養、脱水に対しては高カロリー輸液や経腸栄養を行い改善を図る。
*褥瘡の予防器具・・・エアマット・ウォーターマット・ウォターベッド
4.局所治療・・・除圧を基本とした上で行う。(壊死組織除去法→表)
a)水胞の形成されたもの
湿潤、摩擦からの保護→デュオアクテュブ(クッション効果もある)
b)壊死組織と感染のあるもの(炎症を起こしている)
壊死組織の除去を行い、生理食塩水で高圧洗浄する。この時、潰瘍底には黄色の壊死組織が残存しており滲出液の量は多い。乾燥ガーゼ・蛋白分解酵素(バリダーゼ局所用)を添加したガーゼで壊死組織除去と滲出液の吸収を行う。また、発熱・WBC上昇を伴うときは、抗生剤の投与とともにゲーベンクリーム(スルファジン銀)を局所に塗布する。一日2回以上行い壊死組織を除去していく。
c)壊死組織はあるが感染所見がなく肉芽組織の増殖の見られるもの
壊死組織の除去を行い、残存する壊死組織の融解とと少量の滲出液の滲出液の吸収をデュオアクティブで行う。
d)肉芽組織で覆われているもの
ピンク色を呈しており、欠損部が肉芽組織で覆われているものには生食による低圧洗浄を行う。滲出液は少なく、デュオアクティブで被覆しておく。
e)治癒をゴールにすることが困難な場合
壊死組織の除去と感染制御を目的とし、肉芽組織に覆われることとともに、痛みや臭いから解放させることを目標とする。また、感染の制御が行われれば、経済的な面からは生食ガーゼ(wet to dry dressing)を使用するのみでよい。
ゲーベンクリーム(スルファジン銀)
適応:中・重度の熱傷・各種皮膚潰瘍(褥瘡・外傷性皮膚欠損・糖尿病性壊疽)
作用:黄色ブドウ球菌・グラム陽性菌・緑膿菌・グラム陰性菌・カンジダ
デュオアクティブ
ポリウレタンを背面に創面をゼラチン・ペクチン・ディウムメチルセルロースで構成される親水性コロイドと疎水性ポリマーが混在する吸収部が接する。水蒸気透過性が高い。ペクチンがフィブリン融解能をもち、壊死組織の融解を図る。
<参考図書>ドレッシング (へるす出版)
臨床研修イラストレイテッド1
ー基本手技ー (羊土社)
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