信州大学医学部歯科口腔外科レジデント勉強会
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Department of Dentistry and Oral Surgery, Shinshu University School
of Medicine
1999.10.13 畔上
(1)上顎に単房性の透過像がみられたら・・・
●疑う疾患としては
歯根嚢胞・残留嚢胞・歯周嚢胞・含歯性嚢胞・歯原性角化嚢胞・石灰化歯原性嚢胞・球状上顎嚢胞・術後性上顎嚢胞・エナメル上皮腫など。
口腔内腫脹、疼痛などの症状を呈していたらモ歯根嚢胞?
進行したう蝕の存在、歯髄の感染を伴う外傷の既往の有無がポイントとなるためバイタルをチェック!
X線で歯根膜腔と病巣の連続性の有無。
またX線では、ほとんどの場合嚢胞腔内に原因歯の歯根を含むが、原因歯がみられない場合は過去に抜歯の既往がないか確認。マ残留嚢胞の可能性あり
上顎臼歯部の場合、術後性上顎嚢胞との鑑別が重要マ上顎洞炎手術の既往歴があり手術創の瘢痕があるのかどうか。口腔内や頬部の腫脹、疼痛などの症状を呈していたらモ術後性上顎嚢胞?
患側の鼻症状(鼻閉・鼻漏)、眼症状(複視・眼球突出)の有無。
上顎臼歯部の歯肉ないし歯肉頬移行部の腫脹、圧痛、波動の有無。
時に眼窩下神経麻痺を認める。
Punctureで茶褐色の粘稠な内容液を吸引。口腔内や頬部の無痛性腫脹、違和感などの症状を呈していたらモエナメル上皮腫?
オクルーザルで頬舌側の膨隆。
羊皮紙様感、波動を触れまた歯の傾斜や転位を起こし咬合異常を起こすことがある。
腫瘍に接している歯根に吸収があるか。
Punctureでコレテリン結晶を含まない内容液を吸引する。
埋伏歯を含んでいることが少なくないため含歯性嚢胞、歯原性角化嚢胞、石灰化歯原性嚢胞との鑑別が必要。
嚢胞腔より帯黄色で漿液性の内容液を認めるマ含歯性嚢胞
X線で境界明瞭な透過像の中に小さな石灰化像を多数認めるマ石灰化歯原性嚢胞
X線でホタテ貝状の透過像を、punctureでクリーム状の内容物マ歯原性角化嚢胞
(2)前歯部に類円形の透過像がみられたら・・・
●
疑う疾患としては
鼻口蓋管嚢胞・正中上顎嚢胞・球状上顎嚢胞など。
口腔内の無痛性腫脹、違和感などの症状を呈していたらモ鼻口蓋管嚢胞?
オクルーザルではハート型に写り、パノラマでは円型に写るマ鼻口蓋管嚢胞
両側上顎中切歯の歯根がそれぞれ遠心に変位しているマ正中上顎嚢胞
球状上顎嚢胞:上顎側切歯と犬歯の歯根の間に発生することが多いが、その付近に発生することもある。
歯根離開を認める。
(3)その他
歯の動揺、口腔内や頬部の腫脹、疼痛などの症状を呈していたらモ歯周疾患? 歯肉癌?
歯肉癌はX線で比較的早期に歯槽骨や顎骨に骨吸収がみられることが多いため慢性歯周疾患との鑑別に注意が必要。
有歯顎---辺縁歯肉の腫脹、びらん、潰瘍等を生じ、次いでポケット形成、出血、膿漏などの症状を呈するため、辺縁性歯周炎との鑑別が重要。
無歯顎---浅い潰瘍を呈する肉芽型か白班型が多い。義歯による褥瘡との鑑別が重要。口腔内や頬部の腫脹、疼痛、鼻閉、鼻漏、鼻出血などの症状を呈していたらモ上顎洞癌?上顎洞炎?
上顎洞癌は、初期では、上顎洞炎とにた症状を呈する。(鼻閉・鼻漏・偏頭痛など)
上顎洞炎は両側性が多く、片側が健全な場合は歯性上顎洞炎か上顎洞癌を疑う。
う蝕がないのに歯痛を認める場合がある。
腫瘍が上方に進行⇒眼球突出・複視・篩骨洞の蓄膿・破壊
腫瘍が内側に進行⇒鼻症状が激しくなる。
腫瘍が後方に進行⇒三叉神経痛を呈する。
X線診断が重要で、P-Aで洞壁の消失が、CTで骨吸収・腫瘍の浸潤範囲が把握できる。上顎洞の炎症・嚢胞との鑑別はそれほど難しいものは少ない。
参考文献:
新・口腔外科学 砂書房
臨床イメージノート 永末書店
口腔外科・病理診断アトラス 医師薬出版株式会社
歯科画像診断の最前線 歯界展望 別冊
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