信州大学医学部歯科口腔外科レジデント勉強会

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Department of Dentistry and Oral Surgery, Shinshu University School of Medicine


こんな患者が来院したら 
1. 大唾液腺の腫瘤

1999.9.22 宮澤

^各種検査による鑑別

 ※検査の前に臨床経過、所見が重要
・US:腫瘤の存在(約1B以上)や、周囲組織との関係把握
・CT:内部性状や進展範囲の把握
・CT sialography:腫瘍の存在診断に有効
・MRI:CTと同様だが、特に腫瘤と筋肉、神経、血管系などの軟組織との関係を見るのに有効であるほか、直接顔面神経の描出も可能。更に詳細な質的診断の可能性大。
・RI:動態及び質的診断。炎症、良性、悪性の鑑別。
・USガイド下でのFNA:良性、悪性の鑑別。
・唾液腺造影:腫瘍の局在と大きさ及び悪性度を知るため。

_鑑別診断(各論)

| ガマ腫;舌下腺由来の嚢胞、片側口底部に青白い透明感のある半球状の腫脹軟性で波動性(+)、舌挙上、嚥下障害、構音障害(+)
※顎下型ガマ腫の場合、口腔内よりむしろ顎下部に腫脹をきたし、疼痛、発赤などの炎症症状がほとんどみられないためリンパ管腫、血管腫、脂肪腫との鑑別が必要。

} 唾石症;食事時の急激な唾液腺の腫脹、唾仙痛、双手診にて口底部に硬固物の触知、感染を伴うと開口部の発赤、腫脹、排膿
〈画像診断的な特徴〉
顎下腺、舌下腺系の排泄管内唾石モ下顎片側標準咬合法
顎下腺体及び腺体排泄管移行部唾石モオルソパントモ、側面斜位撮影法
耳下腺唾石モオルソパントモ、後頭前頭位撮影法
顎下腺の管唾石はワルトン菅(耳下腺はステノン菅)の走行に一致して、類円形から楕円形の無構造もしくは核を有する層状構造を示すX線不透過像を示す。
  ※石灰化のないmucous plugの状態では造影像でX線不透過像として発見される。

~ 唾液腺炎
急性唾液腺炎;有痛性腫脹、導管開口部の発赤、腫脹、分泌の減少、膿様分泌物の排出、発熱など一般の炎症所見に準ずる。
・慢性再発性耳下腺炎;耳下腺の片側性、または両側性の反復性の疼痛を伴う腫脹、開口部より排膿(+)、10歳以下の男児。
慢性耳下腺炎、慢性顎下腺炎;〈画像診断的所見〉著しい拡張及び狭窄が認められ、まるでウインナーソーセージのようで、分節状拡張を示すいわゆる”ソーセージ状所見”であり唾液管炎の所見である。
慢性硬化性唾液腺炎;片側顎下三角部に徐々に硬い、無痛性腫脹をきたす。
〈画像診断的特徴〉主導管や第一分枝などの軽度の拡張と管壁の粗造化と末梢導管の消失が見られる。
 ※鑑別診断をようする疾患としては、顎下リンパ節炎、腺系腫瘍、悪性腫瘍
 のリンパ節転移、シェーグレン症候群が考えられるが、病理組織学的診断による。
流行性耳下腺炎;ムンプスウイルスの飛沫感染、2ー3Wの潜伏期、急速に発現する有痛性耳下腺腫脹、耳下腺開口部の発赤が見られるが、唾液そのものは清明
〈検査〉抗ムンプスウイルス抗体価の測定、ペア血清による比較(発症早期の血清と発症2ー3W後の血清の抗体価を比較し、後者が4倍以上であれば、感染陽性と判断する)、抗ムンプスIgM抗体証明、血清アミラーゼ値の測定

シェーグレン症候群

`ikulicz病;涙腺及び唾液腺の無痛性の慢性のび慢性腫脹を呈す
 ※シェーグレン症候群との鑑別
  シェーグレン症候群では口腔乾燥、眼の異常を自覚症状とするのに対し、Mikulicz病では唾液腺及び涙腺の腫脹、硬結を主訴とする。病理組織所見は同一なので確定診断とはならない。

qス形性腺腫;中年女性の耳下腺好発、無痛性腫脹、弾性硬、表面は平滑または分葉状、浅葉に発生したものは境界明瞭な球形を示し、深葉のものは不明瞭、周囲組織との癒着無し。

ヱBリンパ腫;40歳以上男性の耳介下部好発、緩慢に増大する腫瘤で、可動性、弾性軟、無痛性。
 ※腺リンパ腫は、唾液腺シンチグラムで強い集績を呈することが知られており、特に、washout像でも、その集積が残留するのが特徴。

яB様嚢胞癌;40ー70歳代女性の顎下腺(口蓋腺)好発、緩慢な発育、浸潤性で局所の疼痛や顔面神経麻痺を生ずることが多い、一般に境界不明瞭
 ※腺様嚢胞癌では他の悪性腫瘍よりも造影効果が高い

腺房細胞癌;40ー50歳女性耳下腺好発、発育緩慢無痛性腫瘤特徴となる画像所見がないため確定診断は病理組織診断による

10粘表皮癌;30ー40歳代女性耳下腺好発、発育緩徐、無痛性腫瘤、悪性度の高いものは浸潤性を示し、皮膚粘膜に潰瘍を呈し、骨の破壊も認める。

11悪性多形性腺腫;長い経過を示す良性腫瘍が急に増大、浸潤を示し、皮膚粘膜との癒着、顔面神経麻痺、潰瘍形成を示す

付録:悪性、良性の鑑別

参考
 顎口腔外科診断治療大系 (講談社)
 頭頚部画像診断ハンドブック (医学書院)
 頭頚部領域の超音波診断 (中外医学社)


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