信州大学医学部歯科口腔外科レジデント勉強会
Copyright
Department of Dentistry and Oral Surgery, Shinshu University School
of Medicine
プロトコールによる診査
1.主訴:患者がなにを病んでいるのか、どこを治してほしいのか
2.既往歴:特に目・耳・鼻の疾患、リウマチ、精神的な異常の有無手術歴、入院歴も含め直接顎関節症と関係のなさそうな全身的疾患も含めて。
3.現病歴
@関節雑音
音の性質(クリック、クレピタス)、患側別の状況、初発側、
初発時期、経過、発生頻度、
A疼痛
部位、時期、頻度
B発症の動機
C発症後のおよその経過.
D前医の有無と前医の治療
患者が顎関節症の治療を目的として、他の医療機関を受診したことがあるか科、治療内容、薬剤の使用・効果
Eその他:心理的、全身的な問題点など
患者の職業、職務の内容、仕事についての満足感、対人関係、家族構成、趣味、スポーツ
4.現症
@関節雑音
クリック:弾けるようなコキッといった感じの音あるいは振動
クレピタス:ボリボリ、ジャリジャリという振動
相反性クリック(レシプロカルクリック)
程度 振動を触知しうる可触音、器具を用いれば聴取可能なもの、
器具を使用しなくてもきこえる可聴音
発生頻度、雑音発生と顎運動の関係、雑音発生と疼痛との関係A自発痛部位と種類
B触診
[筋肉の触診]
咬筋:中央部および、頬骨弓下縁のやや下方の起始部、夜間のくいしばりや後方咬合時の干渉などで圧痛が出やすい。顎関節部痛との鑑別。
側頭筋:前腹部、中腹部、後腹部について、側頭筋停止部の触診は、口腔内より片側ずつ、示指頭を下顎枝前縁に沿わせて上方に移動させる。
外側翼突筋:下顎を触診側に側方運動させ、下顎骨筋突起と上顎臼歯部歯槽との間を広げ示指頭ないし小指頭を挿入し、上顎結節の後上方ないし後上内方方向に圧迫することで外側翼突筋下腹起始部の緊張を調べる。内側翼突筋:口外法 下顎角のやや前下内方を両側同時に行う。口内法 示指を下顎骨内面にいれる方法。
顎二腹筋:顎二腹筋後腹部は下顎角より後方でしかも耳の下方一横指ぐらいの部位を内方に圧迫する。
胸鎖乳突筋:首を反対側に傾け、かるく緊張させた状態で、中央部、停止部を触れる。頭部の姿勢維持筋。咀嚼や噛みしめ運動中にも緊張がみられる。[顎関節部の触診]
顎関節部外側の触診では、耳珠前方約10@の皮膚面に示指をおき、軽く押さえた状態で咬みしめ時、安静時、開閉口運動時における下顎頭の位置や運動状況などを触知し、同時にその際の疼痛や違和感の有無を聞く。顎関節部後方の触診は、外側皮膚面からの触診では円板後部結合組織部における疼痛を、外耳孔に小指を挿入しての触診では下顎頭における異常運動の有無を調べる。バイラミナーゾーン:関節円板の後部組織。非常に弾力性に富んだ、血管や神経の趨粗な結合組織。
C運動痛部位と種類
筋肉性の運動痛:痙攣(spasm)に陥った筋肉が無理やり伸展させられるために生じる。筋膜、腱、骨膜などにも疼痛が生じる
外傷性(炎症性)の運動痛:筋肉に炎症が生じている場合。バイラミナーゾーンやその他の関節包内部にある組織の炎症部が、顎運動による機械的な刺激を受けることによって生じる疼痛。D下顎切歯点の運動(側方運動域、開口時の運動の様子)
クリック発生顎位、開口距離、最大開口位
5.その他
口腔悪習癖の有無:咬みしめ、歯ぎしり、偏側咀嚼、硬固物嗜好、舌の異常運動等。一日における症状の変動など気がついたことをなんでも書き込む。
6.資料
記録としての口腔内写真の撮影
スタディモデルの記録(咬合診査、下顎頭の位置の異常性)
咬合診査:残存歯数、前歯部被蓋、咬合干渉の有無、咬耗の部位と程度
画像診査
X線: 関節の骨の変形や関節内部の腫瘍など、構造的な異常の有無。開閉口時の関節 頭の位置。
MRI: 関節円板や円板後部組織などの関節内の軟組織、下顎頭と関節結節の骨変形の観察。
咬合音診査、筋電図診査、サーモグラフィ診査
・入門 顎関節症の臨床:中沢勝宏 医歯薬出版株式会社
・顎関節患者のMDO方式による分類法の試みー分類法および同方式による臨床統計学的観察ム:栗田浩、他 日顎誌7(2):89〜96、1995
・顎関節の基礎と臨床:高橋庄二郎、他 日本歯科評論社
Copyright
Department of Dentistry and Oral Surgery, Shinshu University School of Medicine