開業歯科医師に対する各種疾患を有する患者(compromised
host)の歯科治療に関するアンケート調査結果
3,有病者の治療に関する歯科医師の対応方針
○酒井洋徳、栗田 浩、成川純之助、、茅野めぐみ、田中廣一、倉科憲治
今回われわれは、対象を長野県の中信地区の開業歯科医師247名とし、各種疾患を有する患者さんの歯科治療の実態を把握し、歯科医師の意識を探る目的で、郵送によるアンケート調査を実施した。アンケート内容は以下の通りである。
アンケート内容
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下記の状態及び疾患を有するの患者さんの抜歯を含む歯科治療に際しての対応方針
抗血液凝固剤服用者、抗血小板薬服用者、不整脈、ペースメーカー使用者、狭心症、心筋梗塞、高血圧症、糖尿病、肝硬変、薬剤アレルギー、人工透析患者、てんかん、気管支喘息、消化管潰瘍治療薬服用者、免疫抑制剤服用者、寝たきり患者、B型・C型肝炎、HIV感染者、梅毒、結核の既往、MRSA保菌者
解答選択肢
全て自院で治療する
観血処置は病院歯科に依頼する
全て病院歯科に依頼する
観血処置以外の方法を選択し自院で治療する
その他(自由記載)
結果
1、抗血液凝固剤服用患者で、観血処置が病院歯科に依頼されて来る率は約20%程であり、他の疾患と比較して差はなかった。
2、観血処置を病院歯科に依頼してくる率は、狭心症患者、心筋梗塞患者、免疫抑制剤服用患者では約30%、他の疾患では20%程であった。
3、糖尿病患者、消化管潰瘍治療薬服用患者では、全て自院で治療すると解答する率が7割以上と高くなっていた。これは、他の疾患と比較して自での治療が受け入れられやすい傾向にあった。
4、寝たきり患者では、他の疾患と比較してその他という解答が多く,その他で主治医と相談してから対応方針を決定するという記載が多かった。
5、ウィルス性肝炎患者に比べ、HIV感染患者、梅毒患者、MRSA保菌患者は、病院歯科に依頼する率が高くなっていた。
考察
1、今回の調査において、ほとんどの疾患では自院で治療するという解答が多く見られたが、病気に対する正確な知識を有した上であるかは必ずしも明確にされなかった。例えば最も依頼が多かったのはHIV
感染患者であったが、HIV感染者は全身状態がよく、感染対策が十分であれば歯科治療を問題なく行うことができ、むしろ他の疾患、特に狭心症や心筋梗塞の方が歯科治療時の危険は多いと考えられる。これらの疾患において各歯科医師は十分な知識を持ち治療を行っているかどうか今後明らかにする必要があるのだろう。
2、寝たきり患者においては、自院で治療するという解答が他と同程度であったが、自院での治療も困難であるが、病院歯科に依頼するのは介護者が必要となり移動距離も多くなるためそれ以上に困難であると考えられ、やむを得ず自院にて治療しているという現状がうかがわれた。
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