教室の研究状況
信州大学医学部歯科口腔外科

学会報告

第7回日本顎顔面インプラント学会総会(2003.9.13-14 名古屋市)

セラミックスによる骨誘導−長期経過

倉科憲治、栗田 浩

 最近ある種のセラミックスは骨を誘導すると考えるのが一般的である。しかし、骨誘導に必要な条件など不明な点も多く、また誘導された骨が長期間でどの様な経過を取るかについても報告はほとんど見られない。今回われわれはウサギ背部筋肉内に骨誘導能を持つセラミックスを埋入し、1年後に組織学的に検索したので報告した。
動物実験
骨誘導能を有すると確認された3種のセラミックス(三菱マテリアル製HAム900,日本特殊陶業製HA,日本特殊陶業製HA/TCP)と6ヶ月までの埋入で骨誘導の見られなかったセラミックス(三菱マテリアル製HA−1200)の合計4種類を実験に供した。多孔体セラミックスの円柱をウサギ背部筋肉内に1年間埋入した後、非脱灰研磨標本を作製し、光顕にて観察した。
結果
骨誘導能を有する3種のセラミックスでは、1年間埋入後でも骨組織が存在し、短期(6カ月まで)の標本とほぼ同様の所見であり、骨組織は気孔内のみに見られた。一部に骨の添加を思わせる像が見られたが、明らかに吸収を示す像は観察されなかった。短期実験で骨誘導の見られなかったセラミックスではいずれの切片でも骨組織は認められなかった。
考察およびまとめ
ウサギ筋肉内においてセラミックス内に誘導された骨は、1年後でも存在しており短期の実験結果とほぼ同様の組織像を呈していた。吸収される傾向は見られず、また無秩序に増加する様子も認められなかった。短期実験で骨誘導のないものでは、1年後でも骨を誘導することはなかった。今後は、さらに長期の経過についても検討していくつもりである。

EPITECを用いて顎顔面補綴を行った2症例

 栗田 浩、成川純之助、倉科憲治

 悪性腫瘍切除後に生じた顎顔面の欠損に対してEPITECTMを用いて顎顔面補綴治療を行った2症例を報告する。
症例1
患 者:77歳、男性
原疾患:右側上顎洞扁平上皮癌
現病歴:当院耳鼻咽喉科で頬部皮膚を含めた拡大上顎全摘出術を受けた。その後、顎義歯による機能回復を目的に耳鼻咽喉科から紹介され当科を受診した。
局所所見:右眼窩内容物、上顎前方の皮膚、上顎骨右半側および頬骨の一部は切除されており、頬部の欠損は、鼻腔および口腔と交通していた。最大開口量は2横指半であった。上下無歯顎。
処置および経過:術後約1年半経過観察後、全身麻酔下にエピテック・キャリアプレートの埋入術を施行。一次手術終了4か月後に2次手術としてインプラントポスト2本を装着。術後約2年4か月経過後、最終的にバータイプのアタッチメント維持によるエピテーゼを装着した。しかし、アタッチメントの維持力の不足によりエピテーゼが頻繁に脱落するため、維持装置をマッシュルーム型のアバットメントとシリコン印象材による方法に変更。以後脱落等のトラブルもなく経過観察中である。
症例2
患 者:70歳、男性
原疾患:左側上顎洞扁平上皮癌
現病歴:上記診断にて当院耳鼻咽喉科に入院。5-FU(計4,000mg)の動注併用で、放射線外照射50Gy施行後、頬部皮膚を含めた拡大上顎全摘出術を受けた。術後、顎義歯による機能回復を目的に耳鼻咽喉科からの紹介で当科を受診した。
局所所見:左眼窩内容物、上顎前方の皮膚、上顎骨左半側および頬骨の一部は切除されており、頬部の欠損は、鼻腔および口腔と交通していた。下顎骨筋突起は切除されていた。最大開口量は2横指ほどで、開口障害をみとめた。上下無歯顎。
処置および経過:約1年経過観察を行い、症例1と同様にエピテックシステムを用いたエピテーゼの製作を行った。また、顎義歯の維持のためにデンタルインプラントを使用した。


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Department of Dentistry and Oral Sirgery, Shinshu Univbersity School of Medicine