下顎頭外側極の吸収性変化と矢状断面像における下顎頭OA変化との関連
栗田 浩、大塚明子、小塚一芳、畔上卓也、小林啓一、倉科憲治
顎関節円板は下顎頭の内側極および外側極に付着しており、その付着部の変化は関節円板と下顎頭の位置的関係の変化をもたらすと推察される。われわれは下顎頭外側極上方隅角部の変化に注目し、この部の吸収性変化と関節円板前方転位と有意な関連が見られること、また、円板転位が重度になるほどこの部の吸収が高頻度に出現することを報告した。しかし、この外側極の吸収と通常の矢状断面像で観察される下顎頭の変形性変化との関連は不明である。そこで本報告では、両者の関連について検討を行い報告した。
[対象]
1994年から1999年12月の間に当科を初診し、顎関節症との診断でMRI撮影を行った138例217関節。
[方法]
下顎頭外側極の吸収の有無は、眼窩-下顎頭方向単純X線写真上で判定した。また、MRI矢状断面像(関節中央部)において下顎頭皮質骨の変形性変化(吸収性変化、増生成変化)の有無を判定した。
[結果]
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矢状面における下顎頭OA変化が観察された67関節中28関節(42%)で外側極の吸収がみられた。いっぽう、矢状面でOA変化が観察されなかった128関節中では、34関節(27%)で外側極の吸収が観察された。外側極の吸収と矢状断面OA変化の両者が同時に観察された率は28%であった。
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外側極の吸収と矢状断面OA変化の種類(吸収性or増生性)との関連はみられなかった。
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復位性円板転位を持つ関節では、外側極の吸収および矢状断面OA変化は各々単独で見られる傾向があり、非復位性転位を持つ関節では両変化を併発する関節が多くなる傾向がみられた。
以上の結果から、外側極の吸収と下顎頭矢状断面で観察される骨変化の関連は明らかではなかった。
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