教室の研究状況
信州大学医学部歯科口腔外科

学会報告

第45回(社)日本口腔外科学会総会

HA/TCP複合体による異所性骨形成

 倉科憲治、栗田 浩、大塚明子、小林啓一

 ヒドロキシアパタイト(以下HA)に代表されるリン酸カルシウム系のセラミックスは、一般に骨誘導能はないとされているがある種のセラミックスによる異所性の骨形成が報告されている。しかしながら、セラミックスのどのような因子が骨誘導に関係しているかなど不明な点が多い。
今回、混合比の異なる3種類のHA・TCP複合体、HT73(HT:TCP=7:3)、HT28(HT:TCP=2:8)、HT010(100%TCP)の多孔体をウサギ背部筋肉内に6ヶ月間埋入し、骨形成について組織学的およびCMRにより観察し報告した。
 本実験ではHT73群のみで骨形成が認められ、HT28とHT010では全く骨形成は認められなかった。骨は気孔内のみに見られ、気孔壁に沿って形成されており層板状構造を呈していた。HT73群では埋入材料の吸収はわずかであり、6ヶ月後も多孔体構造が保たれていた。これに対してHT28とHT010群では材料の崩壊が著しく、外層部では微細顆粒に変化し多孔体構造の喪失が見られた。中心部では多孔体構造が残存するものの、この部分でも全く骨組織の形成は認められなかった。
 セラミックスによる異所性骨形成においては、多孔体構造の維持が重要な因子の一つである可能性が示唆された。

口腔扁平上皮癌におけるmoesin発現の免疫組織学化学的検討

 小林啓一、畔上卓也、大塚明子、栗田 浩、谷口俊一郎*、倉科憲治

 (信州大学医学部加齢適応研究センター環境適応分野*)

 moesinはERM(ezrin/radixin/moesin)ファミリミリーの1つで、分子量75kDのタンパク質である。moesinはN末側で細胞膜結合タンパク質と結合し、C末側でアクチンフィラメントと結合することにより、細胞膜とアクチンフィラメントの架橋として機能している。また細胞内情報伝達によ関与し、細胞の形態変化や接着、細胞増殖にも役割を果たしている。今回われわれは口腔扁平上皮癌におけるモエシンの発現を免疫組織化学的に検討したので報告した。
 材料は1995年1月から1999年12月までの5年間に信州大学医学部歯科口腔外科を受診した口腔扁平上皮癌一次症例59例の生検ならびに手術標本である。一次抗体としてanti-moesin mAbを用いて間接法にて染色し、評価として強陽性から陰性までの4段階で評価した。
 結果として、悪性度が高くなるにしたがい、細胞膜のモエシンの発現は減少し、細胞質のモエシンの発現は増加した。


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Department of Dentistry and Oral Sirgery, Shinshu Univbersity School of Medicine