教室の研究状況
信州大学医学部歯科口腔外科

学会報告

第3回日本顎顔面インプラント学会総会

術後11年で切除されたHAによる再建下顎骨の検討

       ○倉科憲治、栗田 浩、馬場浩雄

 ハイドロキシアパタイト(以下HA)は、骨と結合する骨代替材料であるが、長期間人体に埋入された後に摘出し検討を加えた報告はほとんどない。今回、われわれは下顎嚢胞摘出腔にHA充填を行い、11年後に骨髄炎のため切除した下顎骨を組織学的に検索する機会を得たので報告する。
 患者は初診時64歳の男性で、1987年12月15日、右下顎部の腫脹を主訴に来科した。試験切除で濾胞性歯嚢胞の診断を得、1988年2月15日嚢胞摘出術を施行し、摘出骨腔にHAを充填した。術後はHA充填部に骨形成を思わせる不透過像を認め、臨床経過も良好であった。しかし、術後11年経過した1999年4月、HA充填部の下顎骨骨髄炎にて右下顎骨の区域切除および腸骨移植手術を行った。
 摘出した下顎骨について組織学的に検索したところ、中心部は感染の波及により肉芽組織に置換され、HA顆粒は排泄されてしまっていた。肉芽組織の周辺部にはHA顆粒の一部が骨組織より遊離して肉芽組織内に散在していた。しかし、さらに皮質骨側では正常と思われる骨組織が保存されており、内部にHA顆粒を取り込み一体化しているのが観測された。この部分の骨組織は正常海綿骨骨組織に類似しており、ほとんどのHA顆粒は骨組織に取り囲まれていた。感染の及んでいる部分でHAブロックが存在する部分は、肉芽組織内にHAブロックの骨組み構造が残っており、顆粒が排泄されてしまっているのと異なった像を呈していた。
 切除した骨の近遠心端は感染が波及しておらず、肉眼的には充填したHA顆粒が下顎骨の一部となっているようにみえ、HA塊と骨組織は良く馴染んでいるように見えた。組織学的には、正常骨組織内にHA顆粒が取り込まれた像で、HA顆粒と骨組織は密に接しているのが観察された。


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Department of Dentistry and Oral Sirgery, Shinshu Univbersity School of Medicine