教室の研究状況
信州大学医学部歯科口腔外科

学会報告

第31回日本歯科麻酔学会総会(2003.9.20 倉敷市)

巨大な甲状舌管嚢胞を有し気道確保が困難であった重度閉塞型睡眠時無呼吸症候群患者の麻酔経験

【緒言】麻酔導入後の気道確保が困難であることが予想されたため、ファイバースコープによる意識下挿管について説明したが同意が得られず、気管切開の承諾を得たうえで急速導入にて喉頭展開を試みたが、その後の気道確保に難渋した症例について概要を報告する。
【症例】48歳、女性。身長154cm、体重88kg。2002年2月頃より口底部腫瘤の増大に伴い二重舌様を呈し、当院口腔外科を受診。甲状舌管嚢胞の診断にて摘出術が予定された。また以前より睡眠中の断続的な呼吸苦のため夜間何回も覚醒を繰り返すという状態が続いており、同年1月より重度閉塞型睡眠時無呼吸症候群(AHI:42.1)の診断のもと、nasal CPAPを使用。
【経過】麻酔前投薬は硫酸アトロピン筋注のみとした。予め導入前に経鼻エアウェイを挿入し十分酸素化を行った後、チオペンタール・スキサメトニウムにて導入。喉頭蓋は確認出来たが喉頭展開は不可能であった。再度マスク換気を行ったが換気不能となりSpO282%まで低下。その後徐々に努力性呼吸が出現し覚醒。咽頭部を十分に表面麻酔し盲目的に挿管したが、体動が激しく自己抜去。局麻下に気管切開を施行しチオペンタールにて再導入。麻酔維持は酸素・笑気・セボフルランにて行った。執刀前にフェンタニル投与したところ、再度換気不全が出現しSpO289%まで低下。ファイバースコープにて気管内の観察を行ったが問題はなく、約10分後にSpO2100%に回復。手術終了後、既製の気切カニューレとの交換を試みたが、皮膚から気管までの距離が長く使用不可能であったため、スパイラルチューブを再挿入。気管チューブは術後2日目に抜去。
【考察】本例は、口腔底部の腫脹・肥満・重度OSASなどの様々な要因が重複したうえ、患者の協力も得られなかったため気道確保や挿管がきわめて困難であった。【文献】1)松村浩明他:臨床麻酔、13(5),627-628,1989


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Department of Dentistry and Oral Sirgery, Shinshu Univbersity School of Medicine