口腔外科治療を契機に発見されたHIV感染の3例
○宮原貴彦 中塚厚史 飯島 響 栗田 浩 倉科憲治
歯科あるいは口腔外科治療を契機にヒト免疫不全ウィルス(以下HIV)感染が発見されたという報告は少ない。今回我々は、口腔外科治療を希望して当科を受診し、HIV感染が判明した3例を経験したので報告した。
症例1:患者は52歳男性で、主訴は右側オトガイ部の疼痛および腫脹であった。患者は左手背蜂窩織炎、両側内因性眼内炎および不明熱が継続していた。患者にHIV感染の自覚は無かったが、免疫不全を疑い、ウェスタンブロット法(以下WB法)を施行した結果、HIV感染が判明した。
症例2:患者は59歳男性で、右側頬部の疼痛を主訴に当科を受診した。右側頬粘膜に水疱があり、摂食困難であり、発熱も認めたため、帯状疱疹を疑い、緊急入院となった。患者はHIV感染の自覚が無かったが、入院時スクリーニング検査の結果、HIV感染が疑われ、WB法による検査でも陽性の結果を得た。
症例3:患者は54歳女性で、左側術後性上顎嚢胞の手術目的で当科入院となった。入院時、全身的・局所的にHIV感染を疑わせる所見はなく、患者も自らがHIV感染者であることを知らなかった。しかし、スクリーニング検査でHIV感染が疑われ、WB法による検査でも陽性の結果を得た。
今後、HIV感染者の増加が予測され、自らもHIV感染者であることを知らない患者が歯科あるいは口腔外科を受診する機会が増加すると考えられる。十分な問診、的確な症状の把握、スクリーニングの徹底、universal precautionの概念に基づいた感染対策などを講じる必要がある。
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