口腔癌における術後化学療法の役割
信州大学医学部歯科口腔外科学講座
栗田 浩、小林啓一、倉科憲治
長野市民病院歯科口腔外科
田村 稔
飯田市立病院歯科口腔外科
峯村俊一
頭頸部癌の術後補助化学療法に関しては否定的な意見が多いものの、その有用性に関する定まった見解は得られていない。われわれはここ数年、口腔癌進展例を対象にプラチナ製剤を中心とした術後補助化学療法を積極的に行ってきた。そこで今回われわれは過去の症例をレトロスペクティブに調査し、術後補助化学療法の有用性について検討を加えたのでその概要を報告する。
対象:1990年から2000年の間に、当科にて根治的な腫瘍切除術を中心とした集学的治療を行ったStage III、IVの口腔原発扁平上皮癌新鮮症例41例。
方法:下記に示した臨床的/組織学的予後因子および治療内容を説明変数とし、cause specific survivalおよびdisease free intervalをエンドポイントとした多変量解析(変数選択型Cox比例ハザードモデル)用い、術後化学療法の有用性の検討を行った。<説明因子:T分類、頸部転移リンパ節の個数/レベル、腫瘍の分化度、病理学的浸潤様式、術前化学療法、放射線療法(含む化学療法の併用)、術後化学療法>
結果:術後化学療法の有無および内容はcause specific survivalに影響を与えなかった。一方、disease free intervalに関しては頸部リンパ節の個数と術後化学療法の有無は有意なファクターであり、術後化学療法施行例では再発および転移までの期間の延長が見られた。
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