教室の研究状況
信州大学医学部歯科口腔外科

学会報告

第26回日本口腔外科学会中部地方会

術後下肢深部静脈血栓症を合併した舌下腺悪性腫瘍の1例

小塚 一芳、張淳美、酒井洋徳、大塚明子、栗田 浩、倉科憲治

 今回われわれは、左側舌下腺癌切除術後に発症した下肢深部静脈血栓症の1症例を経験したので報告した。血栓症のリスク因子としては 血栓症の家族歴・既往歴、抗リン脂質抗体陽性、悪性腫瘍、心疾患、高年齢(40〜70歳以上)、重症感染症、長期安静臥床、血液濃縮(Hct=40%以上)、肥満(BMI26以上)、高脂血症、喫煙、長時間手術などが挙げられているが、本症例では悪性腫瘍、高血圧、高年齢、肥満、長時間の手術等の因子があり、血圧コントロールの不良や術後の長時間安静臥床により下肢深部静脈血栓症が誘発されたと考えられた。下肢深部静脈血栓症の予防には、早期離床、AVインパルス、圧迫用ストッキング、下肢の挙上、 マッサージ、足首の背屈運動、十分な補液などが提唱されている。われわれ口腔外科領域の患者でも、下肢深部静脈血栓症が発症する可能性があることを念頭に、患者管理を行うことが必要であると思われた。

スプリント療法にて著効を示した重症閉塞型睡眠時無呼吸症候群の2症例

中塚厚史、宮澤英樹、倉科憲治

 無呼吸指数(AI)>40/hの以上の重症閉塞型睡眠時無呼吸症候群の治療に対して、下顎を前方へ誘導する歯科装具・Sleep Splint単独での治療は効果が無いといわれている。今回、スプリント単独で効果のあった重症2例(装着前のAI =54.56,72.14)に対し、当科の於ける睡眠調査票とEpworth Sleepiness Scale(以下ESS scores)法による評価、夜間睡眠時呼吸検査の結果、Sleep Splint装着前後の頭部×腺規格写真・cephalogramによる気道形態の変化について報告する。夜間睡眠時呼吸検査に於いて、2症例ともAIが85%以上(54.56→3.25/h、72.14→11.14)改善し、睡眠調査票、ESS scoresでも改善傾向を示した。またcephalogramの分析結果にからスプリント装着後、2症例とも、舌骨の上方移動と上気道の前後的幅径の増加が認められた。軟口蓋の長さの変化はスプリント装着前後で見られなかった。今後、効果の無かった重症例と比較検討する。


歯科口腔外科の研究状況のページに戻る

Copyright
Department of Dentistry and Oral Sirgery, Shinshu Univbersity School of Medicine