片側性口腔扁平上皮癌における対側頸部リンパ節転移の検討
2、T4症例について
栗田 浩1、小林啓一1、倉科憲治1、田村 稔2、峯村俊一3
1:信州大学医学部歯科口腔外科学講座
2:長野市民病院歯科口腔外科
3:飯田市立病院歯科口腔外科
対側頸部リンパ節に転移をきたした症例の予後は不良で、対側に転移を生じる症例の予測、および、それに対する治療法の確立が必要である。われわれはこれまでの検討でT4、および、舌T2以上の症例で対側頸部リンパ節転移が出現することを報告した。そこで、今回はT4症例について、対側転移を来す因子について検討を加えたので報告する。【対象および方法】1985〜1999年の15年間に当科にて入院加療を行った片側性(両側犬歯間原発例、多発癌症例を除く)の顎口腔領域扁平上皮癌患者211例のうち、新鮮例かつT4(UICC1997)と診断された39症例。このうち対側転移を来した群(転移群;13例)と来さなかった群(非転移群;16例)の間で原発腫瘍の臨床所見、患側頸部リンパ節転移の様相、病理組織所見等を比較検討した。【結果】転移群と非転移群の間で患側頸部転移リンパ節の個数および転移レベル、原発腫瘍が正中を越えて進展している頻度に関して統計学的に有意差が見られた(Mann-Whitney
U-testあるいは Fisherユs exact probability test,
P<0.05)。【結論】以上の結果から、顎口腔領域のT4症例では、原発腫瘍が正中を越えて進展している場合、または、患側頸部リンパ節に複数の転移を認めた場合は、対側リンパ節転移の危険性が高まるものと考えられた。
|