教室の研究状況
信州大学医学部歯科口腔外科

学会報告

第25回日本頭頸部腫瘍学会総会
(2001年6月20ー22日 札幌市)

口腔扁平上皮癌におけるmoesin発現と転移との関連について

小林啓一、栗田 浩、森藤政代*、大石正道*、倉科憲治

信州大学医学部歯科口腔外科学教室
*九州大学歯科学部大学院口腔顎顔面病態学講座顎顔面腫瘍制御学

【目的】moesinはERM(czrin‐radixin‐moesin)ファミリーの1つで、細胞膜とアクチンフィラメントのクロスリンカーであるともに、細胞の形態変化、接着、増殖に関与するとされている。今回われわれは、口腔扁平上皮癌におけるmoesinの発現と転移との関連ついて調査したので報告する【材料ならびに方法】材料はヌードマウス移植ヒト扁平上皮癌標本(SQUU-A、SQUU‐B)ならびに1995年1月から1999年12月の5年間に信州大学医学部歯科口腔外科を受診した口腔扁平上皮癌一次症例72例の生検時の標本とこのうち頚部リンパ節転移を認めた15例の頚部リンパ節標本である。これらを抗moesin mAbを用いて免疫組織化学的に検討した。【結果】ヌードマウス移植ヒト扁平上皮癌標本において、高転移性のSQUU‐Bは低転移性のSQUU-Aと比較すると細胞質におけるmoesinの発現の増加を認めた。同様に頚部リンパ節転移を認めた症例と頚部リンパ節転移が見られなかった症例の生検時の標本におけるmoesinの発現を比較すると頚部リンパ節転移を認めた症例において、細胞質における発現が増加し、細胞膜における発現は減少していた。また生検時の標本と転移リンパ節標本におけるmoesin発現のパターンは類似していた。

片側性口腔扁平上皮癌における対側頸部リンパ節転移の検討 
2、T4症例について

栗田 浩1、小林啓一1、倉科憲治1、田村 稔2、峯村俊一3

1:信州大学医学部歯科口腔外科学講座
2:長野市民病院歯科口腔外科
3:飯田市立病院歯科口腔外科

 対側頸部リンパ節に転移をきたした症例の予後は不良で、対側に転移を生じる症例の予測、および、それに対する治療法の確立が必要である。われわれはこれまでの検討でT4、および、舌T2以上の症例で対側頸部リンパ節転移が出現することを報告した。そこで、今回はT4症例について、対側転移を来す因子について検討を加えたので報告する。【対象および方法】1985〜1999年の15年間に当科にて入院加療を行った片側性(両側犬歯間原発例、多発癌症例を除く)の顎口腔領域扁平上皮癌患者211例のうち、新鮮例かつT4(UICC1997)と診断された39症例。このうち対側転移を来した群(転移群;13例)と来さなかった群(非転移群;16例)の間で原発腫瘍の臨床所見、患側頸部リンパ節転移の様相、病理組織所見等を比較検討した。【結果】転移群と非転移群の間で患側頸部転移リンパ節の個数および転移レベル、原発腫瘍が正中を越えて進展している頻度に関して統計学的に有意差が見られた(Mann-Whitney U-testあるいは Fisherユs exact probability test, P<0.05)。【結論】以上の結果から、顎口腔領域のT4症例では、原発腫瘍が正中を越えて進展している場合、または、患側頸部リンパ節に複数の転移を認めた場合は、対側リンパ節転移の危険性が高まるものと考えられた。


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