教室の研究状況
信州大学医学部歯科口腔外科

学会報告

第25回日本口腔外科学会中部地方会

当科外来における高齢受診患者の臨床統計的観察

鎌田孝広、大塚明子、張淳美、栗田 浩、田中廣一、倉科憲治

 高齢化社会が進み、当科においても高齢者の受診が増えていますが、予備力の低下や全身疾患の合併などにより高齢者においては治療上特別の配慮を必要とする。そこで今回我々は、高齢者の現状を把握し、今後の治療の参考とすることを目的とし、1999年4月から2000年3月までに外来を受診した新患患者1317名について臨床統計的観察を行ない報告した。今回の調査では65歳以上を高齢者とした。
 結果は、新患患者の23.1%が高齢者であり、高齢者の紹介率は67.5%で紹介先では院内からの紹介が多く37.4%占めていた。高齢者の他科疾患保有者率は81.3%で、高齢者は64歳以下の患者よりも複数の疾患を有している傾向にあった。循環器系疾患が56.9%、次いで消化器系疾患、内分泌・代謝性疾患の順であった。歯科口腔外科疾患別では高齢者において粘膜疾患、悪性腫瘍が64歳以下より多い傾向が認められた。

帯状疱疹を契機に発見されたHIV感染者の1症例

畔上卓也、上原 忍、小林啓一、田中廣一、倉科憲治
リハビリテーションセンター鹿教湯病院歯科口腔外科 松澤智由貴
長野市民病院歯科口腔外科 清水俊英

 近年、HIV感染者の増加にともないHIV感染者と気づかず診察、治療を進められるケースもあることが予想される。今回われわれは、顎顔面領域の帯状疱疹と診断した59歳男性でスクリーニング検査にてHIV感染症と判明した1症例を経験したので報告した。治療は帯状疱疹に対してアシクロビルとグロブリン製剤の点滴静注を開始した。右顔面皮膚と口腔内に見られた多発性水疱は入院9日目に痂疲を形成して改善傾向が見られ、HIV感染に対する治療を目的に内科転科となった。本邦ではHIV感染患者のほとんどが性行為により発生し、多くは何らかの日和見感染症が生じて初めてHIVに感染していると判明される。以上の経験から、体力の低下、栄養障害などの明らかな背景因子がなく、急速かつ広範囲に出現する帯状疱疹患者は、HIV感染症も考慮にいれる必要があると考える。


歯科口腔外科の研究状況のページに戻る

Copyright
Department of Dentistry and Oral Sirgery, Shinshu Univbersity School of Medicine