ワークショップ
「口腔癌の外科病理:舌粘膜における上皮異形成ム診断基準の統一に向けて」
2,舌粘膜病変の肉眼的指標としてのヨード染色の有用性
栗田 浩
口腔粘膜癌の多くでは癌病巣の周囲に異型性を示す上皮の広がりを有していることが知られている。この異型上皮の過小評価は癌切除後の局所再発の原因となったり、また、その過大評価は切除後の機能障害の一因となる。これら異型上皮の広がりを臨床の場で正確に診断することは口腔癌の治療に重要な因子である。
われわれは、歯科用ヨードグリセリン(以下JG)液を用いた生体染色を口腔粘膜に応用し、その有用性の検討を行ってきた。今回は、上皮性異形成の診断におけるヨード染色の有用性について口腔粘膜特に舌粘膜病変について考察を加え報告した。
1,正常口腔粘膜および口腔粘膜病変のヨード染色性
正常非角化粘膜と炎症上皮はJG染色陽性(呈色反応あり)を示し、正常角化粘膜と異型上皮および扁平上皮癌ではJG染色陰性(呈色反応無し)を示した。
2,異型上皮/悪性病変の診断精度
舌粘膜病変における検討では、異型上皮の診断に関して精度は92%、感度100%、特異度78%であり、異型上皮は全てJG染色陰性を示した。
3,口腔粘膜異型上皮の範囲の診断における精度(被覆粘膜における検討)
JG染色による病変の境界と病理学的な境界との差は平均で1mm以下であった。病変を過小評価した際の差の最大は2.1mmであり、JG非染色域から5mmのフリーマージンをとれば病変の取り残しの可能性がないと思われた。
4,口腔粘膜異型上皮の範囲の診断における有用性(視診のみによる診査との比較)
JG染色を用いた方が視診のみによる診断より検査者間の信頼性が高かった。視診のみによる診断はJG染色併用時より病変を過大評価する傾向がみられた。
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