教室の研究状況
信州大学医学部歯科口腔外科

学会報告

第20回日本口腔腫瘍学会総会
(2002/1/24~25 岡山市)

口腔扁平上皮癌におけるネダプラチン+UFT併用術前化学療法の検討

      藤森 林、栗田 浩、畔上卓也、大塚明子、小林啓一、田中廣一、倉科憲治

 シスプラチンの誘導体であるネダプラチンは、頭頸部癌において高い有効性が報告されており、口腔癌においても今後その応用が期待されている薬剤である。われわれの施設では口腔粘膜癌根治手術待機症例に対し、ネダプラチン+UFT併用化学療法を術前治療として行ってきた。そこで今回、その臨床効果について報告する。
対象:Stage、。および「の口腔領域扁平上皮癌11症例。
方法:診断後できるだけ早期から手術前日までUFTを300または400mg/日で内服。途中ネダプラチン80または100mg/Fを1回静注した。
結果:UFTの投与量は2,100〜24,600mg(7〜60日間)、ネダプラチンの投与量は平均121mgであった。臨床効果(頭頸部癌取り扱い規約)はPR4例、NC7例で奏効率は36.4%であった。組織学的効果(下里分類)はGb2例、G。2例で奏効率は40%(*1例手術施行せず)であった。臨床学的に効果があった症例と、病理学的に効果があった症例は完全に一致していた。UFTの総投与量と効果との関連は認めなかった。副作用(日本癌治療学会 固形癌化学療法効果増強の判定基準)は、Grade3以上の好中球減少を3例に、Grade3の血小板減少を1例に、Grade3の発熱を1例に認めた。血液毒性はネダプラチン投与約3週間後にnadirとなった。
まとめ:本療法は外来での施行も可能であり、術前化学療法としての可能性が示唆された。本療法は奏効例と非奏効例がはっきり区別されており、効果を左右するなんらかの因子の解明が必要である。

 

生体染色(特にヨード染色)を用いた口腔粘膜異型上皮の診断

      栗田 浩、小林啓一、畔上卓也、大塚明子、田中廣一、倉科憲治

 口腔粘膜癌の多くでは癌病巣の周囲に異型性を示す上皮の広がりを有していることが知られている。この異型上皮の過小評価は癌切除後の局所再発の原因となったり、また、その過大評価は切除後の機能障害の一因となる。これら異型上皮の広がりを臨床の場で正確に診断することは口腔癌の治療に重要な因子である。
 われわれは、歯科用ヨードグリセリン(以下JG)液を用いた生体染色を口腔粘膜に応用し、その有用性の再検討を行ってきた。今回はこれまでの研究成果をまとめ、異型上皮の臨床診断における有用性について報告した。
<報告内容>
1,正常口腔粘膜および口腔粘膜病変の染色性
 正常非角化粘膜と炎症上皮はJG染色陽性(呈色反応あり)を示し、正常非角化粘膜と異型上皮および扁平上皮癌ではJG染色陰性(呈色反応無し)を示した。
2,異型上皮の診断精度
 異型上皮の診断に関して精度は97.6%、感度100%、特異度93%であり、異型上皮は全てJG染色陰性を示した。
3,口腔粘膜異型上皮の範囲の診断における精度(被覆粘膜における検討)
 JG染色による病変の境界と病理学的な境界との差は平均で1mm以下であった。病変を過小評価した際の差の最大は2.1mmであり、JG非染色域から5mmのフリーマージンをとれば病変の取り残しの可能性がないと思われた。
4,口腔粘膜異型上皮の範囲の診断における有用性(視診のみによる診査との比較)
 JG染色を用いた方が視診のみによる診断より検査者間の信頼性が高かった。視診のみによる診断はJG染色併用時より病変を過大評価する傾向がみられた。


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Department of Dentistry and Oral Sirgery, Shinshu Univbersity School of Medicine