教室の研究状況
信州大学医学部歯科口腔外科

学会報告

第18回日本口腔腫瘍学会総会

当科における上顎歯肉悪性腫瘍の臨床的検討

茅野めぐみ、栗田 浩、今井恭一郎、畔上卓也、大塚明子、小林啓一、田中廣一、倉科憲治

 今回我々は、過去14年間の上顎歯肉発症悪性腫瘍症例に対し臨床的検討を行なったので報告した。
 結果は、性別では、男女比1:1.5で女性に多く、平均年齢は71歳であった。発生部位は、ほとんどが後方型であった。病理組織型は悪性リンパ腫1例以外は、扁平上皮癌であり、高分化型がほとんどであった。
 次に、扁平上皮癌症例に対し検討した結果、T分類では、T2症例が半数を占め、T3T4が約20%を占めていた。N(+)症例は、21.5%であり、全症例M0であった。病期分類では、Stage2が半数を占め、次いでStage3、4の順であった。次に、初回治療法及び治療成績を検討した結果、T1、T2では、外科治療単独症例が多く、T3、T4では、集学的治療が行われていた。頸部郭清術を予防的に行った症例は1例もなかった。原発巣局所制御率78.6%と比較的良好な結果であったが、進展症例ほど低い制御率を示した。一次治療後、局所再発及び後発転移ともに認めなかった症例は、約70%を占めていたが、原発巣再発率14.3%、後発転移率10%であった。原発巣、患側頸部ともに再発し、対側頸部リンパ節転移も認めた症例1例も認めた。全症例の5年累積生存率は、28.7%であった。病期別では、Stage1、2では、85%以上と良好であったが、進行癌は成績が悪く、早期癌と進行癌との間に成績の差が見られた。死亡原因は、原発巣死1例、遠隔転移死2例(ともに肺)治療合併死1例、他癌死1例であった。
 以上から、T3T4症例では、初診時よりN(+)及び後発転移を認めた症例の頻度が高いことより、所属リンパ節をも考慮に入れた治療を行う必要がある。また、進行癌において、外科治療後の再発、後発転移をきたした症例の遠隔転移が予後を左右する傾向にあると言え、今後の予防法治療法に対し検討が必要と思われた。

当科における唾液腺悪性腫瘍の臨床的検討

栗田 浩、茅野めぐみ、今井恭一郎、畔上卓也、大塚明子、小林啓一、田中廣一、倉科憲治

 唾液腺の悪性腫瘍は症例数が少ないこともあり、充分な検討がなされているとは言えない。今回われわれは1985から1998年の過去14年間に経験した唾液腺悪性腫瘍症例をretrospectiveに調査検討しその概要を報告した。結果は以下の通りであった。
1、 症例数は17例で、この調査期間中の悪性腫瘍の6.5%をしめた。
2、 男女比は7:10。年齢の中央値は62歳(39〜81歳)であり、60歳代に症例のピークが見られた。
3、 発症部位は、大唾液腺と小唾液腺で同頻度で、硬口蓋が6例と最も多かった。
4、 病理組織型では腺様嚢胞癌が最も多く9例、次いで粘表皮癌5例であった。
5、 T分類ではT1が6、T2が5、T3、T4が各3例であった。N1が1例みられたが、他はN0であった。また、初診時全例M0であった。ステージ分類では、I期8、II期5、III期1、IV期3例であった(1997 UICC分類)。
6、 治療は1例を除き手術療法が選択され、そのうち12例で術後照射が行われていた。手術では、顕微鏡的に腫瘍の残存が疑われるものが10例みられた。
7、 原発巣の再発が3例でみられ、遠隔転移が4例みられた。遠隔転移の4例はいずれも原発巣の腫瘍の残存、再発がみられた症例であった。
8、 累積生存率(cause specific survival)は5年で94%、10年で64%であった。生存率は病期分類の進行にしたがい低下していた。


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