口腔癌に対する術前治療としてのCDDP少量連日投与・放射線併用療法と放射線単独照射の効果の比較 2、局所制御率、転移抑制効果、生存率への影響について
栗田 浩、大塚明子、小林啓一、田中廣一、倉科憲治、田村 稔
Cisplatin(CDDP)は、放射線の増感作用を持ち、放射線治療の併用薬として用いられている。われわれは口腔癌にCDDP少量連日投与を併用した術前放射線治療において口腔癌原発巣における放射線照射の抗腫瘍効果の増強が得られることを報告した(癌の臨床43:734-738、1997)。今回はそれら症例の追跡調査を行い、局所制御率、転移抑制効果、生存率への影響について検討を行ったので報告する。
対象は1992〜1996年の5年間に術前放射線治療→予定根治手術を計画したStage〜「の口腔扁平上皮癌新鮮例(CDDP併用群、放射線術前単独照射群、各10例)である。1993年以降術前治療にはCDDPの併用を基本方針としているが、単独群は種々の理由から抗腫瘍薬の併用を断念した症例である。
放射線治療は術前30〜40Gyを目標に、1日1回2Gyで週5回施行した。CDDP併用群では原則として照射終了後30分以内にCDDP5mg/bodyまたは5mg/m2をone
shotで静注した。その後、術前治療終了約2週間後に予定した根治手術を施行した。術後必要により、adjuvant
chemotherapyまたは術後放射線治療が一部の症例で行われた。
追跡期間(1998年9月20日現在)は最短9ヶ月、最長55カ月、中央値25カ月であった。
【結果】原発巣の再発は両群ともに1例づつ認めた。照射野内での頚部再発および後発転移は両群ともに2例であった。照射野外(反対側)への頚部転移は、併用群で1例、単独群で2例であった。遠隔転移は併用群で1例、単独群で2例であった。生存率では両群間に有意な差は認めなかった。
以上の結果より現時点で、CDDP併用による局所制御率、転移抑制効果、生存率の向上は見られていない。
累積生存率
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