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信州大学医学部歯科口腔外科

学会報告

第16回日本顎関節学会総会(2003.7.10-11 鹿児島市)

顎関節内障の放射線学的進行度(Wilkes Criteria, 1989)と臨床症状との関連
○ 酒井洋徳、栗田 浩、小嶋由子、倉科憲治、大塚明子

【目的】顎関節内障の進行度分類のひとつに、Wilkesらが提唱した放射線学的進行度(Radiologic stages of internal derangement of the TMJ, Wilkes Criteria)がある。しかし、本分類が臨床における症状の重症度と関連しているか否かは不明である。本報告の目的は本分類と臨床症状との関連を検討することである。
【対象および方法】対象は1994-99年の間に顎関節内障との臨床診断でMRI検査を受け、その結果顎関節内障が確認された122人の患者(167関節)。女性100名、男性22名で、平均年齢は29.5±13.9歳であった。初診時に臨床症状を調査(顎関節疼痛;VAS score, 0〜100、最大開口量;mm)した。MRI検査所見からWilkes Criteriaに準じて各関節の顎関節内障の進行度を分類し、臨床症状との関連を検討した。
【結果】各関節の進行度は23関節がStage 1, 46関節がStage2, 52関節がStage 3, 37関節がStage 4&5と分類された。
 顎関節内障のStageの進行とVAS scoreおよび最大開口量それぞれの間で統計学的に有意な関連が認められた(Spearman's correlation coefficient by rank, P<0.05)。すなわち、Stageが進行するほど疼痛が強度でまた開口量も制限されていた。
【結語】今回の検討の結果、Wilkesらの顎関節内障の放射線学的進行度は、顎関節内障の臨床症状の重症度と相関していると考えられた。

顎関節内障進行に伴う下顎頭の形態変化
ー顎関節内障の進行に伴い下顎頭は小さくなる?−
○ 栗田 浩、小嶋由子、酒井洋徳、倉科憲治、大塚明子

 顎関節内障の進行に伴い下顎頭には種々の形態学的変化が出現することが報告されている。顎関節円板は下顎頭外側および内側極付近に付着しており、関節円板の転位はこれら下顎頭の付着部において何らかの変化を生じさせるものと考えられる。われわれは“関節円板の前(内)方転位が下顎頭外側極付近の形態学的変化を生じさせ、しいては下顎頭の縮小化が生じる”との仮説のもと、下顎頭外側極付近の形態学的変化に注目し種々の検討を行ってきた。今回の報告では、これまでの研究結果を元に上記仮説について検討した。
【対象】1994年〜2000年の期間に顎関節内障との臨床診断で、MRI撮影を行った18歳以上の患者121例(190関節)。内訳は女性96名、男性25名、平均年齢32.7±13.5歳(平均±SD)
【結果】
1, 顎関節内障の進行に伴い、下顎頭外側極後上方隅角部付近の吸収が生じる。
2, 顎関節内障の進行に伴い、水平断面における下顎頭長軸角は大きくなる。
3, 顎関節内障の進行に伴い、下顎頭の内外側径(長軸の長さ)は小さくなる。
4, 下顎頭外側極付近で見られる形態学的変化と、下顎頭関節面で見られる変化とは関連が見られない。
【まとめ】顎関節内障の進行に伴い下顎頭外側極付近の吸収性変化が生じ、下顎頭の縮小化が生じるものと推察された。


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