教室の研究状況
信州大学医学部歯科口腔外科

学会報告

第13回日本顎関節学会総会
(2000/6/29,30 福岡市)

側頭骨関節結節の平坦化と顎関節内障の進行度との関連

1信州大学医学部歯科口腔外科学講座 2長野市民病院歯科口腔外科
○大塚明子1,栗田 浩1,上原 忍1,清水俊英2,倉科憲治1

 側頭骨関節結節の平坦化は顎関節症の結果として生じるといわれている。これまでの他家やわれわれの検討でも、復位を伴わない関節円板前方転位をもつ関節のほうが、復位を伴う転位をもつ関節よりも、関節結節後斜面は緩やかであると報告されている。そこで今回われわれは、関節結節の平坦化は顎関節内障の進行に伴って生じるとの仮説をたて、関節結節平坦化の出現と顎関節内障の進行度との関連を検討したので報告する。
対象:1991〜98年までに顎関節症との臨床診断で顎関節のMRI撮影を行った16歳以上の症例で、円板転位の存在が証明された130例170関節。
方法:画像所見による顎関節内障のステージ分類(Wilkes、Schellhas、1989)を用いて、各関節の顎関節内障の進行度を5段階に分類した。その分類結果とMR画像上で評価した関節結節の平坦化の有無との相関関係を検討した。
結果:顎関節内障のステージ分類結果は、ステージIが31、が52、。が48、「またはVが39関節であった。MRI画像上36関節で関節結節の平坦化がみられた。顎関節内障の進行度と関節結節の平坦化の有無との間で有意な相関関係がみられた。顎関節内障のステージが進むほど関節結節の平坦化が高頻度であり、関節結節の平坦化は顎関節内障の進行に伴い発生する可能性が示唆された。

関節円板の前方転位は下顎頭外側極の吸収を引き起こすか?

1信州大学医学部歯科口腔外科学講座 2長野市民病院歯科口腔外科
○栗田 浩1,大塚明子1,上原 忍1,清水俊英2,倉科憲治1

目的:関節円板は下顎頭の内および外側極から後方の隅角部にかけて付着しており、円板−下顎頭複合体を形成している。関節円板の前方転位はこれら下顎頭の付着部に何らかの変化を来していることが推測される。そこで今回われわれは、下顎頭の外側極の吸収の有無に着目し、外側極の吸収と関節円板前方転位との関連を検討した。
対象:1994〜1999年までの間に顎関節症の診断で顎関節のMRI撮影を行った138例217関節。
方法:初診時の顎関節正面X線像(眼窩関節頭方向撮影)における下顎頭の外側極の吸収の有無とMRI画像における関節円板前方転位の有無、転位の程度、および、円板変形との関連を検討した。
結果:下顎頭外側極の吸収は72関節(37%)で観察された。外側極の吸収は、円板転位のある関節の方が転位のない関節より有意に高頻度であった。外側極の出現頻度と、円板転位の程度および円板変形との間に有意な関連が見られた。すなわち、外側極の吸収は円板の転位および変形が重度になるほど高頻度に見られた。
結語:これらの結果から、下顎頭外側極の吸収と円板前方転位との関連が示唆された。円板転位が重度な関節ほど外側極の吸収がおきやすいと思われた。


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Department of Dentistry and Oral Sirgery, Shinshu Univbersity School of Medicine