教室の研究状況
信州大学医学部歯科口腔外科

学会報告

第12回日本有病者歯科医療学会総会
(2003/3/29-30、東京都)

1,シンポジウム@「抗凝固療法と歯科治療について」
当科の実態調査とアンケート調査報告

○倉科憲治

ベルナール・スーリエ症候群患者の歯科治療経験

○中塚厚史、小嶋由子、成川 純之助、栗田 浩、倉科憲治

 ベルナール・スーリエ症候群(以下:BSS)は出血傾向を特徴とする疾患で、常染色体劣性遺伝する。BSS患者の観血処置を含む歯科治療の報告はわれわれの渉猟した範囲では皆無である。今回、BSS患者の歯科治療を経験したので報告する。
【患者】22歳、女性。
【主訴】左上顎部の疼痛
【現病歴】過月経を契機にBSSとの診断を受け当院小児科にて加療中であった。2002年5月頃より左上顎部の疼痛を認め、当科紹介され受診した。
【初診時所見】口腔内に多数の齲歯、多量の歯石沈着を認め、また全歯牙の歯頚部歯肉には重度の歯肉炎が見られ、ブラッシングで容易に出血する状態であった。
【処置及び経過】血小板10単位輸血後、口腔衛生指導、左下78の抜歯、左上6の感染根管治療を行った。抜歯窩に酸化セルロースを填入し、縫合し、止血用シーネを装着するも、翌日まで出血を認めたため、血小板10単位を追加し止血を認めた。現在、当科外来にて他の歯牙の治療を継続中であるが、口腔内の状態も改善してきており、ブラッシングによる出血も認められなくなった。
 以前はブラッシングするだけで出血があり、それを恐れブラッシングを避けていたために歯肉炎や多数歯齲蝕を生じていた。そのため、口腔清掃の重要性を理解させ継続させていくことが最も重要であると思われた。

歯科ユニットを介した院内感染の防止対策−当科での試みとその効果−

○栗田 浩、成川純之助、中塚厚史、小嶋由子、倉科憲治

 院内感染は医療を行う上で重要な問題である。歯科・口腔外科の臨床においても院内感染対策はにわかに注目を集めてきている。院内感染の経路として、1,患者から歯科医療従事者、2,歯科医療従事者から患者、3,患者から患者、4,歯科医療従事者から歯科医療従事者の4つが考えられている。そして、汚染された器械や器具を介して患者から患者へ感染させる点で、われわれ医療従事者は非常に危険な立場にある。
 器械や器具を介した感染経路の一つとして歯科ユニットを介した感染の可能性が考えられる。術者が汚染した手で触れることや、患者からの飛沫等により歯科ユニットには病原体が付着する。その付着した病原体は、その後そのユニットを使用する患者への感染源となる。われわれは歯科用ユニットを介した院内感染を防止するため、ユニットのカバー等の感染防止対策を改善した。そこで今回の報告では、この感染対策改善前後の院内感染の動向について検討を加え、その有効性について報告する。
【感染防止対策】
 2002年4月にこれまで行っていた院内感染防止対策に加え、入院患者が毎日の処置を受ける際に使用する歯科用ユニットのカバー、タービン/エンジンおよびスリーウェイシリンジの使用禁止などの感染予防対策を追加した。
【対象および方法】
 2001年〜2002年の当科入院患者を対象に、上記感染防止対策開始前(2001年1月〜2002年3月)および開始後(2002年4月〜11月)のMRSAおよび緑膿菌の検出動向を調査比較した。
【結果(2002年11月末現在)】
1, 当感染防止対策開始前の調査で、歯科用ユニットからはMRSAが検出された。しかし、改善後の調査ではMRSAは検出されなくなった。
2,本対策開始後、入院患者から新たなMRSAの検出は見られなかった。
3,本対策開始後、入院患者から緑膿菌の検出は見られなくなった。


歯科口腔外科の研究状況のページに戻る

Copyright
Department of Dentistry and Oral Sirgery, Shinshu Univbersity School of Medicine