歯科ユニットを介した院内感染の防止対策−当科での試みとその効果−
○栗田 浩、成川純之助、中塚厚史、小嶋由子、倉科憲治
院内感染は医療を行う上で重要な問題である。歯科・口腔外科の臨床においても院内感染対策はにわかに注目を集めてきている。院内感染の経路として、1,患者から歯科医療従事者、2,歯科医療従事者から患者、3,患者から患者、4,歯科医療従事者から歯科医療従事者の4つが考えられている。そして、汚染された器械や器具を介して患者から患者へ感染させる点で、われわれ医療従事者は非常に危険な立場にある。
器械や器具を介した感染経路の一つとして歯科ユニットを介した感染の可能性が考えられる。術者が汚染した手で触れることや、患者からの飛沫等により歯科ユニットには病原体が付着する。その付着した病原体は、その後そのユニットを使用する患者への感染源となる。われわれは歯科用ユニットを介した院内感染を防止するため、ユニットのカバー等の感染防止対策を改善した。そこで今回の報告では、この感染対策改善前後の院内感染の動向について検討を加え、その有効性について報告する。
【感染防止対策】
2002年4月にこれまで行っていた院内感染防止対策に加え、入院患者が毎日の処置を受ける際に使用する歯科用ユニットのカバー、タービン/エンジンおよびスリーウェイシリンジの使用禁止などの感染予防対策を追加した。
【対象および方法】
2001年〜2002年の当科入院患者を対象に、上記感染防止対策開始前(2001年1月〜2002年3月)および開始後(2002年4月〜11月)のMRSAおよび緑膿菌の検出動向を調査比較した。
【結果(2002年11月末現在)】
1,
当感染防止対策開始前の調査で、歯科用ユニットからはMRSAが検出された。しかし、改善後の調査ではMRSAは検出されなくなった。
2,本対策開始後、入院患者から新たなMRSAの検出は見られなかった。
3,本対策開始後、入院患者から緑膿菌の検出は見られなくなった。
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