復位可能な前方転位関節円板と復位不能な転位円板
−円板転位量の比較−関節内側面と外側面で転位量に差があるか?
栗田 浩、大塚明子、高見澤紳治、今井恭一郎、清水俊英、倉科憲治
顎関節円板の前方転位は復位を伴うものと、復位を伴わないものに大別される。一般に、病状の進行とともに復位を伴う状態から復位を伴わない状態に移行すると考えられている。本報告ではMRI画像を用いて、関節円板の位置を計測し、復位を伴うもの、伴わないもので転位量に差が見られるか否か検討した。また、転位量が同程度であれば復位の有無の違いは関節の内側または外側面での転位量の違いが関与しているとの仮説を立て、その検討を行った。
[対象]1991年7月から1998年10月の間に当科を初診し、顎関節症との診断でMRI撮影を行った159例231関節。
[方法]円板位置の計測:閉口時矢状断MRI画像において、関節結節最下点(T)から外耳孔最上点(P)を結ぶ直線TPを引く。線分TPから関節円板後方肥厚部後縁から線分TPに垂線をおろし、その交点をCとする。距離TC、TPを測定し、関節円板の位置を比(TC/TP)として表した。計測は関節頭長径を3等分し関節外側、中央、内側の3つの深さで計測した。対象関節を円板転位の見られない関節、復位を伴う関節、および、復位を伴わない関節の3群に分類し、それぞれの深さで円板の位置の比較を行った。
[結果]全症例を対照にした検討では、復位を伴わない関節円板は全ての深さで復位を伴う円板よりも前方に位置していた。復位を伴う関節、伴わない関節ともに関節内側、外側間で転位量で有意差は認めなかった。転位量が同程度(中等度)の円板のみで比較した
結果では、内・外側で両群間に円板位置の有意差を認めた。
[結語]今回の検討から、円板転位量が軽度〜中等度の関節では、関節内側、外側における転位量の差が復位の有無を左右する因子となっている可能性が示された。
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