信州大学医学部歯科口腔外科レジデント勉強会
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Department of Dentistry and Oral Surgery, Shinshu University School
of Medicine
上顎正中過剰埋伏歯は、歯の交換期においては中切歯の傾斜や正中離間の原因となるので多くは学童期に抜去されるが、中高年になってから感染を受けたり、義歯の障害となるようになって抜歯されることもある。抜歯にあたって考慮しなければならないのは、@過剰埋伏歯は中切歯の歯根にきわめて近い位置にあることが多いので、中切歯の歯髄を栄養する血管や神経を損傷しないように注意する.A埋伏歯が唇側あるか口蓋側にあるかによってアプローチがまったく異なるので、術前の検査で明確にしておかねばならない。
過去の報告をまとめると、5つに分額できる。
1、障害がなければ放置・定期的な経過親察。
2、経過観察中、なんらかの障害が生じた時点で抜去する。
3、発見次第、早期にあるいは可及的に抜歯。
4、隣在する永久歯の歯根形成を待って抜歯する。
5、障害がなくても7〜8歳頃に抜歯する。
《唇側からのアプローチ》
(1)粘膜切開:
歯肉切開(Wassmund)⇒図1‐a・歯肉骨膜弁基部を広くとる。
・縦切開は隣在歯の中央を通るようにする。
・切開線は十分な術野を確保できるように設定する.
弓状切開(Partsch)⇒図1-b・表在性の埋伏に適する。
・切開にはメスを用い、十分骨膜下に達する切開を行う。
(2)歯肉骨膜弁の剥離
・骨膜剥離子を用いて粘膜弁を確案に剥離する。
・粘膜弁の損傷と出血をできるだけ少なくするためにガーゼを介して剥離する。
(3)歯冠周囲の歯槽骨の削除
・歯槽骨の削除はできるだけ少なく、かつ埋伏歯の画冠最大豊隆部を露出させる。
・両隣在歯の歯根を損傷させないように注意する。
(4)過剰歯の抜去
・歯槽骨壁と埋伏歯との境界を明確にヘーベルで脱臼する。
・隣在歯に密接しているときは、隣在歯にも手を添えて充分注意して脱臼する。
・歯根が彎曲している時は無理なカをいれず、彎曲部まで骨を除去し、歯を分割して抜去する。
(5)抜歯後の処置、粘膜弁の閉鎖
・抜歯後、波の破折片の有無を確かめる。
・止血を十分に行い、画冠周囲の軟組織を鋭匙にて除去し、鋭利な歯槽骨鋭縁部を骨鉗子と骨ヤスリで平滑にする。
・十分に消毒を行い、粘膜骨膜弁を術前の状態に復位し、縫合する。
《口蓋側からのアプローチ》
●このような埋伏過剰歯は通常、その70%以上は口蓋側に存在すると言われている。一連の外科手街の手順は上で示したものと同様であるが、切開線などに注意する必要がある。
(1)粘膜下に当該歯歯冠の一部が確認できる場合、または比較的浅層にある場合は、図2‐aのような切開線に沿って切開する。
(2)探く位置する場合は半月状切開を行うこともある。(図2-b)この切開では、埋伏部位で術野を広くとれるが切開線が切歯孔に及ぷことがあり、抜歯時および抜歯後の出血、口蓋弁の血行不良を起こす欠点があるので注意を要する。
(3)唇側と口蓋側との両方にまたがって歯が埋伏している壌合は両側の粘膜骨膜弁を形成し、抜歯することもある。
(4)骨膜剥離の際、切歯窩のところに鼻口蓋神経血管束を認めるが切歯窩から別離する。
参考文献:抜歯の臨床(医歯薬出版)
埋伏歯の臨床(医歯薬出版)
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