教室の研究状況
信州大学医学部歯科口腔外科

学会報告

第54回長野県医学会(2003.11.16 長野市)

当科における睡眠時無呼吸症候群の治療について

中塚厚史1、楠 公孝1、小林啓一1、栗田 浩1、倉科憲治1、藤本圭作2、漆畑一寿2、久保惠嗣2
1,信州大学医学部歯科口腔外科学教室 2,信州大学医学部内科学1教室

 われわれは2000年4月より当院呼吸器内科と連携して閉塞型睡眠時無呼吸症候群(以下OSAS)の患者の治療を行ってきている。当科では、下顎を前方に誘導しオトガイ舌筋の呼吸性筋活動を増大させ、吸息時の気道内陰圧による舌の引き込みを補償する口腔内装置(Sleep Splint;以下SS)を用いOSASの治療を行っている。今回、われわれが実際に行っている治療を紹介し、その効果について報告した。
氈CSSの作成について
 上下顎の印象採得後、下顎の前方への最大移動量の60から70%になるように下顎位を決定する。そして上下顎の石膏模型を作成し、熱可塑性弾性材料である軟性義歯裏装材を加圧重合しsoft typeで一体型のSSを作成している(図1)。
,SSの適応と不適応について
 OSASと単純性いびき症を適応としている。しかし、残存歯牙が少ないもの、重度の歯周病、高度の鼻閉、顎関節症、著明な扁桃肥大、自己管理不能な精神障害などを有する患者は不適応症例として除外している。
。,当科での治療成績について
1,対象
 2000年4月から2002年9月までにOSASの診断のもと当科を受診した64名の内、無呼吸低呼吸指数(以下AHI)が20以上である中等度症例以上の36名。男性32例、女性4例で年齢は28から72歳で平均56.4歳、BMIは20.2kg/m2から34.6で平均25.6であった。AHI≦20の軽症例はSS装着後AHIを測定していないため今回の検討から除外した。
2,検討方法
 SS装着前後に終夜睡眠ポリソムノグラフィー検査を施行し、AHIの改善率を求めた。
3,結果
 中等度症例においては、SS装着前AHIが22.0から装着後23.0に増加した1例を除き、他の全ての症例で改善した。3分の2以上の症例でSS装着によりAHIが20以下になった。中央値ではSS装着前30であったのが、装着後12まで減少した。
 重症例では、1例でSS装着前AHIが63.5であったのが装着後65.0と増加した以外、他全例で改善を認め、多くの症例でSS装着後AHIが30以下に減少した。中央値では、SS装着前、59.1であったのが、装着後22.1まで低下し、著しく改善した。
 SS装着前後におけるAHIの改善率は中等度症例ではほぼ50%、重症例では70%近い改善率であり、治療効果はほぼ良好であると言える。


歯科口腔外科の研究状況のページに戻る

Copyright
Department of Dentistry and Oral Sirgery, Shinshu Univbersity School of Medicine