尿化学      2004年度 鎌田

 

尿サンプルを使って実施する検査グループを総称して指す一般用語

 

検査項目      基準範囲           検査項目         基準範囲  

U-UN          15~30 g/day          U-Na          70~250 mEq/day

U-Cre         1.0~1.5 g/day          U-K           25~100 mEq/day

U-UA          0.4~0.8 g/day          U-Cl          70~250 mEq/day

U-Glu           (-) g/day                     U-Ca          0.1~0.3 g/day                   

U-TP          25~75 mg/day         U-iP           0.5~2.0 g/day 

U-ALB          <20 mg/day           U-AMY        59~458 U/L(随時尿)

U-NAG        0.3~11.5 U/L(随時尿)    尿蛋白電気泳動

U-β2-MG     30~370           尿免疫固定法

U-IgG                                       尿免疫電気泳動

U-TF 

 

尿中UN

蛋白質をどの程度摂取しているかを知る。尿素は腎臓から排出される物質で、尿素の排出量は、腎臓のはたらきによって変わる。尿中の尿素の量を調べ、血漿(血液)中の尿素の量との比を求めれば、腎臓が血液から尿素を濾過して排出する能力を知るための目安となる。

 

尿中クレアチニン

クレアチニンは体内でクレアチンから産生される終末代謝産物であり、主に尿中に排泄される。腎機能評価に有用である。

 

尿中尿酸

尿酸の量は、痛風の診断や治療の際に調べられるのが最も一般的である。痛風は、尿酸が関節で結晶化することによって起こる。また、腎結石のあるものは尿酸から形成される。尿酸は、プリン代謝の最終生成物である。

高値:慢性骨髄性白血病、痛風、プリンを多く含む食事、肝疾患、真性多血症

低値:慢性アルコール摂取、慢性糸球体腎炎、鉛中毒、尿路閉塞

 

尿中グルコース

随時尿を使用した場合 : グルコースが検出されなければ正常

24時間分の尿を標本に使用した場合 : 0.5g/day未満であれば正常

高値:クッシング症候群、糖尿病、激しいストレス(たとえば外傷や外科手術)

 

尿中電解質

体液浸透圧異常、酸-塩基平衡異常などの指標となる。

 

尿中総蛋白

生理的蛋白尿と病的蛋白尿がある。尿定性参照

 

尿中アルブミン

尿中アルブミンは糸球体障害の指標であり、慢性糸球体腎炎、ネフローゼ症候群、腎硬化症など糸球体に組織変化をきたす腎疾患患者で尿中に出現する。

 

尿中アミラーゼ

アミラーゼは、グリコゲンやデンプンの消化を助ける酵素で、主に膵臓と唾液腺で生成される。膵臓から分泌されたアミラーゼは、通常、膵管から小腸に送られる。

高値:急性膵炎、膵癌、卵巣癌、肺癌、胆嚢炎、子宮外妊娠、または妊娠中の卵管の破裂、 胆嚢疾患、唾液腺の感染症(流行性耳下腺炎(おたふくかぜ)、または閉塞症)、アルコール摂取、腸閉塞、膵管閉塞、穿孔性潰瘍

低値:膵臓の損傷、腎臓病、膵癌、妊娠中毒症

 

尿中NAG

NAGは腎の近位尿細管のライソゾームに存在する加水分解酵素で、ムコ多糖類や糖蛋白の分解に関与している。尿中に排泄されるNAGは近位尿細管から逸脱したもので、尿細管障害があるときにその排泄が増加する。糸球体障害でも尿細管は二次的に障害されるためNAGの尿中排泄は増加する。尿路感染の場合、膀胱炎ではNAGの排泄は増加しないが、腎盂炎ではNAGの排泄は増加するので鑑別診断に有用である。

 

β2ミクログロブリン

β2ミクログロブリンは分子量11800、アミノ酸99個からなるポリペプチドで、主要組織適合性抗原であるHLAクラス沚R原のL鎖として全身の有核細胞の細胞膜表面に分布する。リンパ球や単球細胞など免疫担当細胞に豊富に分布している。低分子量であるため腎の糸球体基底膜を自由に通過し、尿細管上皮細胞で再吸収・異化される。尿中に排泄されるのは再吸収されなかったごく一部のみである。尿細管が障害されると糸球体基底膜を通過したβ2ミクログロブリンの再吸収が低下し、最終的に尿中に排泄される量が増加する。NAGと異なるのは尿細管の数が著しく減少している進行した腎障害でもその障害の程度に応じて尿中の排泄量が増加することである。自己免疫疾患、ウィルス感染症や悪性腫瘍などのβ2ミクログロブリンの産生が増加するような病態では血中のβ2ミクログロブリンレベルが上昇し、糸球体基底膜を通過するβ2ミクログロブリンが増加する。尿細管で再吸収される量には限度があるので、この場合は尿細管障害がなくとも尿中のβ2ミクログロブリンの排泄は増加する。

 

尿中トランスフェリン

アルブミンより荷電量が少ないため、より軽度な糸球体障害でも尿中に出現する。特に早期の糖尿病性腎症の検出に有用。トランスフェリン(Tf)はβグロブリン分画に属する血漿蛋白で、主に肝臓で合成される。血清中では鉄と結合して生体内の組織へ鉄を輸送する役割を持つ。

尿中ではTfは糸球体基底膜を通過しないため、通常は検出されない。しかし腎疾患では強い陰性荷電をもつアルブミンに比べ、荷電量が少ないため、糸球体を容易に通過し、尿中に見られるようになる。したがって、軽度な糸球体障害時にアルブミンより早く尿中に出現、増加する。本検査は尿中クレアチニン値で補正された値で報告されるため、蓄尿の必要がなく部分尿で安定した値が得られる。尿中Tfは、糖尿病の最も重要な合併症の一つである糖尿病性腎症の早期マーカーとして利用されており、早期発見・早期治療に有用である。

高値:腎障害(特に糖尿病性腎症の早期診断に有用)、尿細管障害   

低値:臨床的意義は少ない 

 

尿蛋白電気泳動

通常、尿から大量の蛋白質が検出されることはない。しかし、尿中タンパクは、様々な疾患にかかっているかどうかを判断する上での目安になる。

尿中タンパクは、大きくアルブミンとグロブリンに分けることができます。尿タンパク電気泳動検査は、尿中タンパクが存在する原因を調べたいときや尿中にどのような蛋白質がどれだけ含まれているかをおおまかに知りたいときに行われます。

尿中に有意な量のグロブリンが含まれていない。

正常値:尿中に有意な量のグロブリンが含まれていない。尿中アルブミンが50mg/dl未満

異常値:腎不全、腎臓の機能低下、糖尿病性腎症、急性の炎症、ネフローゼ症候群、急性尿路感染症

 

尿免疫固定法

尿中にどんな種類の蛋白質が含まれているかを調べるための手法(検査技術)である。免疫固定法は検査技術の1つで、一般的な蛋白電気泳動法による検査結果をさらに詳しく分析するために使用される。免疫固定法は主に、多発性骨髄腫、ワルデンストロームのマクログロブリン血症などにかかっているときにみられる単クローン系の蛋白質(IgG、IgM、IgA、λ軽鎖、κ軽鎖など)を検出するため(またはその増減をみるため)に使用される。

 

尿免疫電気泳動( U-IgGも含まれる)

- これは、尿中に免疫グロブリンが存在するかどうかを調べるための検査です。免疫グロブリンが存在した場合は、それがポリクローン性であるかモノクローン性であるかを判別しますこの検査は、尿にどんな免疫グロブリンがどの程度含まれているかをおおまかに知るための検査で、特に、(尿検査などで)尿中タンパクが検出され、尿タンパク電気泳動で際立った量のグロブリン蛋白質(抗体)が検出された患者に対するスクリーニングテストとして行われるのが最も一般的である。尿中タンパクがまったく存在しなければ(またはごくわずかしか存在しなければ)正常な状態と言える。また尿中タンパクが検出されても、尿中アルブミンであれば正常人にも検出されることがある。尿中に免疫グロブリン(抗体)が混入するのはIgA腎症、IgM腎症といった腎臓疾患や、多発性骨髄腫(癌の一種)にかかったときで、ある種の腫瘍性疾患(多発性骨髄腫、慢性リンパ球性白血病など)にかかると、リンパ球のクローンが単独で免疫グロブリンを作るようになる。