信州大学医学部歯科口腔外科
Department of Dentistry and Oral Surgery, Shinshu University School of Medicine

レジデント勉強会
ー臨床検査ー
血清総タンパク・アルブミン(TP , Alb) 2004.2.25 中塚

 *血清中には多くのタンパクが存在(知られているだけでも80種類以上)。
 *生命維持に大きな役割がある。
 *その中(血清タンパク)でアルブミンが約60%以上を占め、次に多いのがγグロブリン。

基準値
 TP 6.8-8.3g/dl Alb 4.2-5.1g/dl(TPの約60%)

血清蛋白を計測するには?
 *日常臨床検査で用いられているのは電気泳動による蛋白分画法。
* セルロースアセテート膜(濾紙より繊維構造が細かく短時間で分解できる)電気泳動法が一般的。
* 図の様に陽極からアルブミン分画,α1,α2・・・となる。
* なお、これらの分画には多くの蛋白から構成されている。

血清蛋白の代謝について
 合成、崩壊、体内分布、体外漏出によって決まる。
 ,合成 
  大きく分けるとウ肝臓とエリンパ
 ,体内分布 
  血管壁を通過し組織、関節液、髄液、体腔液、眼内液等に分布
 。,体外喪失 
  ウ腎→尿 : 蛋白は40-80mg/day排泄。特に多いのはアルブミン。
  エ胃腸管→消化液 : 消化液として8l/day(唾液も含む)分泌。この中にAlb等含む。
 「,崩壊(異化) 
  ウ(外)分泌腺を備えた臓器(胃腸管、腎、涙腺、性器)(図を参照)
  エ内因性異化(体内で崩壊) ほぼ全ての組織で起こる。(図を参照)

代謝異常(異常値が出る原因)は?       
 ,合成異常
  ウ合成過剰 合成細胞の数が増える場合と個々の細胞の活性が増加する場合の2通り。
        合成細胞が増える場合は、腫瘍性(多発性骨髄腫)と反応性(自己免疫疾患)。
       細胞の活性が増加する場合は、炎症疾患。
  エ合成低下 必須アミノ酸は体内で合成されない。つまり、飢餓、栄養不良、悪液質等で
         供給が低下する場合。
         合成細胞が破壊された場合。つまり肝硬変や肝切除後。
 ,体内分布の異常
  広範な浮腫が出現すると、水分とともに血清蛋白が移行する。
  また循環血液量の減少(脱水等)あると血清蛋白は一見高くなる←注意!!
 。,体外喪失の異常
  ウ多量の失血 TP,Alb↓
  エ皮膚 熱傷、重症の浸出性皮膚炎(尋常性天疱瘡、水疱性多形性紅斑等) TP,Alb↓
  オ腎  腎糸球体の障害(ネフローゼ症候群)により血清蛋白が尿中に漏出。TP,Alb↓
       ネフローゼ症候群では5〜10g/day以上(正常の1日量は上記)に及ぶ大量の蛋白が尿中
      に排泄。
 「,崩壊(異化)の異常
  これも今までの考えと同様に崩壊の減少(TP,Alb↑)と増加(TP,Alb↓)が考えられるが、実際には
  崩壊の減少によって血清蛋白に大きな影響が出ることは無く崩壊速度の増加により低蛋白血症をきた
  す場合が重要。
  ウ特定蛋白の体内での消費の増加 DIC(フィブリノーゲン、ハプトグロビン等)
  エ細胞内での内因性の異化亢進 急性炎症性疾患、外傷・手術ストレス、発熱、甲状腺ホルモン・副腎
  皮質ホルモンの増加でアルブミンが減少することが知られている。

採血時の注意点                            
 臥位よりも立位で、さらに運動で高くなるので早朝よりも夕方に高値(主として血液濃縮による)。

TP,Alb値の異常と対応(参考までに)       
 TP≧8.0g/dlではまず脱水の有無を確認。脱水があれば補液にて血液希釈。脱水が否定出来れば免疫グロブリン増加を考慮し血清蛋白分画や尿検査を行う。TP≧9.0g/dlはM蛋白血症であることが多い。(Alb単独高値は考えにくい。)
 次にTP≦6.5g/dlはまず血液希釈による影響を除外し、Alb減少をきたす病態(栄養障害、ネフローゼ症候群、肝疾患、悪性腫瘍、手術後等)について確認する。Alb≦2.5g/dl(急性の場合(長時間の術後等)はAlb≦3.0g/dl)ではアルブミン製剤の投与。(例えばアルブミナー5% 250ml 1日2回、3日間程度)。また浮腫を伴えば、利尿剤(ラシックス)の使用を考慮する。ネフローゼ症候群や肝硬変ではアルブミン製剤を投与してもAlb値の上昇が十分でないため、3日間程投与したら効果判定する。
                      

参考文献
 一目で分かる臨床検査 メディカル・サイエンス・インターナショナル
 異常値の出るメカニズム第1版 医学書院
 レジデントノート2003年8月号Vol.5-No.5 羊土社

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