信州大学医学部歯科口腔外科
Department of Dentistry and Oral Surgery, Shinshu University School of Medicine

レジデント勉強会
ー臨床検査ー
赤血球の一般検査      2004.1.7 田口

赤血球数(RBC)・ヘモグロビン(Hb)・ヘマトクリット(Ht)・赤血球指数(MCV・MCH・MCHC)・
網状赤血球

意義:貧血と多血症(赤血球増加症)の有無を調べる。
貧血症:末梢血液中のRBC、Hb、Ht値のいずれか、またはいずれかが正常より減少した病態。RBCの産生
と破壊のバランスが崩れ起こる。
多血症(赤血球増加症):末梢血液中のRBC、Hb、Ht値が基準範囲を越えて増加する病態。
脱水状態など血液が濃縮されても、これらの値は上昇する。
・エリスロポエチン産生増加による二次的多血症
 低酸素状態:高山病、心肺機能不全など
    エリスロポエチン産生腫瘍および腎障害
・骨髄の自律性増殖による真性多血症
 
@ 赤血球数(RBC)
赤血球数に影響を与えるもの
@ 造血幹細胞の量および質的異常 → 減少(再生不良性貧血、赤芽球癆)。
増加(真性多血症)。
A 赤血球の成熟と増殖に必須なDNA合成の異常(葉酸、ビタミンB12の欠乏あるいは代謝障害)→ 葉酸、
あるいはビタミンB12欠乏による巨赤芽球性貧血
B 造血刺激因子であるエリスロポエチンの異常 → 腎性貧血、エリスロポエチン過剰分泌による多血症。
C 出血および溶血による赤血球の喪失 → 急性出血、各種の溶血性貧血。
A ヘモグロビン(Hb)
貧血の診断と重症度の判定に最も重要かつ不可欠なもの。
Hb濃度に関与するもの
@ 鉄とその輸送タンパクであるトランスフェリン → 異常:鉄欠乏性貧血、
無トランスフェリン症
A プロトポルフィリン-ヘム合成 → 異常:鉄芽球性貧血
B グロビン合成 → 異常:サラセミア(地中海性貧血)Hb生成の低下により、小球性    
低色素性赤血球が出現する。
B ヘマトクリット(Ht)
全血に占める赤血球の容積率。臨床的に意義が深いのは多血症(赤血球増加症)の場合。絶対的にせよ相対
的(血液濃縮)にせよ、ヘマトクリット値の上昇は過粘度症候群の危険性をもたらす。60%以上では血液粘
稠度の上昇は急峻となる。
C 赤血球指数
MCV(平均赤血球容積 mean corpuscular volume)
MCH(平均赤血球Hb量 mean corpuscular hemoglobin)
MCHC(平均赤血球Hb濃度 mean corpuscular hemoglobin concentration)
赤血球の形態による貧血の分類
・小球性低色素性貧血(MCV<80、MCHC<30)
  鉄欠乏性貧血、感染・炎症・腫瘍に伴う貧血など
・正球性正色素性貧血(MCV 81〜100、MCHC 31〜35)
急性出血、溶血性出血、赤血球産生低下
・大球性貧血(MCV>100、MCHC 31〜55)
   葉酸欠乏、代謝異常、肝障害に伴う貧血
D網状赤血球
後期赤芽球が脱核して生じる最も幼若な赤血球で、この段階ではじめて抹消血液中に出現する。その増減は
骨髄の赤血球産生能を反映している。
・ 貧血があり、骨髄で赤血球産生が亢進 → 網赤血球増加
急性出血(黄疸なし)、溶血性貧血(軽〜中等度の黄疸)
・骨髄で赤血球産生が低下 → 網赤血球減少(再生不良性貧血、抗癌剤投与時などの骨髄抑制時、巨赤芽球
性貧血(ビタミンB12欠乏、葉酸欠乏)、骨髄異形成症候群などの無効造血)

基準値(信州大学医学部付属病院)
 Hb 男 12.9 〜 17.4 g / dl     女 10.7 〜15.3 g / dl
 RBC 男 4.14 〜 5.63 × 106 / mm3  女 3.73 〜 4.95 × 106 / mm3
 Ht  男 38.6 〜 50.9 % 女 33.6 〜 45.1 %

注意点 
・採血時に駆血時間が長いとヘマトクリット値が高くなる。
・出血の急性期には血管収縮により代償されてヘマトクリット値の低下しないときがある。
・経口摂取の少ない患者や老人では脱水傾向がある。
・出血性ショック時輸液や膠質液により血液が希釈され、貧血の程度を誤ることがある。
・静脈血は毛細血管血よりも15〜20%程度低め、臥位では立位よりも10%低めの値となる。
・多血症や貧血が相対的(脱水、希釈)であるか、絶対的であるかを判別した後、それぞれの疾患を想定し
て、血清学的検査や骨髄検査などを加えて診断する。

参考文献:
一目でわかる臨床検査(メディカル・サイエンス・インターナショナル)
研修医ノート(診断と治療社)
異常値の出るメカニズム(医学書院)

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