血管腫 血管奇形

 従来、血管の数が増えたり拡張したりして生ずる病変は、ほとんど「血管腫」という大きくまとめた病名で呼ばれていました。そのなかに性質や見た目の異なる「血管腫」がたくさんあったために、それぞれの「血管腫」に名前をつけて細かく分類していました。
それらの名前は主に『見た目』を忠実に表現したものでした。
たとえば、苺状血管腫、海綿状血管腫、つる状血管腫、クモ状血管腫、被角血管腫、単純性血管腫、リンパ管嚢腫などなど。病名が細分化し沢山の名前ができればできるほど患者さんも迷い、実際は医者も迷っておりました。「血管腫」は「血管腫」でも、治療法は全く違うし、これらの病名は治療に結びついたものではなかったし、中には自然に良くなるものまであったからです。

 1980年代、米国ボストンの形成外科医Mulliken先生らが、新しい血管病変の分類法を発表しました。それはこれまでの「血管腫」を腫瘍(血管腫:hemangioma)と奇形(血管奇形:vascular malformation)に分けるというものです。この分類法により、これまで混沌としていた「血管腫」の世界がすっきりと整理され、正確な診断とそれに基づいた適切な治療が導き出せるようになりました。

現在、多くの施設でこの新しい分類に基づいた診断、治療が行われています。

 私たちの施設では開設当初より、血管性病変の治療を行っております。2006年には、杠医師がMulliken先生のもとに留学し、最新の研究、診断、治療を研修してきております。

 血管病変の治療はまだまだ未解決な部分が多く、また体じゅうの表面のみならず、からだの中までどこにでも病変が生じるため、一つの診療科のみですべてを解決できるわけではありません。切除手術、レーザー治療、硬化療法、内服薬など現在ある治療方法だけでも多岐にわたります。私たち形成外科医としてできる治療のみならず、適切な専門家との協力体制を作り、最良の治療を受けていただけるよう、血管病変の診療をコーディネイトする場となれるように努力しております。

ページの先頭へ