信州大学医学部地域医療推進学講座(長野県寄附講座)は、医師不足を主たる原因とする長野県の地域医療の崩壊を少しでも阻止すべく「県内病院の特に医師不足が深刻な診療科における医師の養成・確保を図るため、医師が不足する特定診療科の効率的な医師の養成等に関する実践的研究を行い、信州大学医学部を中心とした即戦力医師等の供給システムの構築を図る。」を目標に、平成21年度から平成23年度の3年間の長野県からの寄附講座として設置されました。この設立趣旨に基づいて、医師の地域偏在・診療科偏在・女性医師の増加・診療科の専門細分化、ならびに医療資源としての医師の適正配置について、それらの現状を把握し、解決策を立案すべく調査・研究、活動を行ってきました。また、今後の医療を担う人材としての高校生への啓発事業を開催し、さらに医学生の卒前・卒後教育にも参画してきました。
平成23年10月26日に、長野県の医師確保等総合事業として信州医師確保総合支援センターが開設されました。このセンター設置は、地域医療を担う医師のキャリア形成を支援しながら、その確保・定着を図るとともに、総合的な医師確保対策を実施することにより医師の偏在解消を目指す、ことを目的としています。分室が長野県立病院機構と信州大学医学部に設けられ、それぞれに長野県より業務が委託されることになりました。平成24年度からは、これまでの信州大学医学部地域医療推進学講座(長野県寄附講座)の専属教員2名が引き続いて、長野県から委託される業務・活動を信州医師確保総合支援センター信州大学医学部分室にて行います。
これまで信州大学医学部地域医療推進学講座(長野県寄附講座)にて実施されてきた活動・業務のほとんどは平成24年度以降も継続の予定ですが、キャリア形成支援ならびに医師となった後の配置調整などの長野県の医学生修学資金貸与者(医学生、医師)に関わる委託業務が新たに加わります。
近年、地域医療に関連した講座が全国の医学部、医科大学に設けられるようになっています。講座名は、地域医療を冠した、地域医療総合医学講座、地域医療推進学講座、地域医療教育学講座、地域医療システム学講座、総合地域医療講座、地域医療学講座、地域医療センター、地域医療科学教育研究センター、地域医療実践センター講座など様々です。これら講座は、地域医療を担う医師の養成や地域医療の人材確保の仕組みの構築と卒前教育における地域医療教育の充実を目的としています。
地域医療崩壊が叫ばれる現在においては、この地域医療教育の重要性が増しています。医学教育モデル・コア・カリキュラムの平成19年度改訂では、地域医療に関する項目が拡充され、臨床実習に地域医療臨床実習の項目が追加されました。さらに、平成22度の医学教育モデル・コア・カリキュラムでは、地域医療教育の重要性がさらに強調され、医師として求められる基本的な資質の中で、地域医療は、「医療を巡る社会経済的動向を把握し、地域医療の向上に貢献するとともに、地域の保健・医療・福祉・介護および行政等と連携協力する。」と明記されています。また、地域医療の問題は特定の地域(都道府県)に留まらない構造的問題であるため、地域医療教育は、医学部における卒前教育において普遍的かつ継続的に行われるべきと言われています。
これからの信州大学医学部の使命の一つとして、地域を見て、地域のニーズに対応し、地域に貢献する良医の育成があります。このためには、信州大学と様々な地域が連携・協力して地域医療教育を実践し、医学生に地域医療の魅力を伝え、医学生の地域へ思いや地域医療マインドを育む必要があります。この地域医療教育の取り組みは、医師と社会との関わりについて認識を深めさせることにより、専門職としての医師のプロフェッショナリズムの涵養にも極めて効果的と考えられます。
この地域医療教育の推進のために、平成24度より、信州大学医学部講座としての地域医療推進学講座が開設されました。昨年度の信州大学医学部地域医療推進学講座(長野県寄附講座)の専属教員2名が信州大学医学部地域医療推進学講座の教員となっています。