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平成18年8月、信州大学医学部附属病院内に「人工内耳センター」を開設いたしました。信州大学では平成11年から人工内耳プロジェクトを開始し、現在までに患者さんも着実に増えています。人工内耳は従来治療法がなかった高度難聴の患者さんに対する画期的な治療法ですが、人工内耳の効果を最大限に引き出すためには機器の調整や手術後の(リ)ハビリテーションが必要不可欠です。特に小児の患者さんには、それぞれの発達に合わせてプログラムを組み発音や言葉のトレーニングしていくことが必要です。人工内耳センターでは、人工内耳による聞こえを最大限に活用するため、医師、言語聴覚士、教育関係の専門スタッフが協力して一人ひとりに対する最適なプログラムを組みサポートを行っています。
全国には90dB以上の高度難聴者が約17万人、そのうち人工内耳の適応と考えられる人は8万人いると予想されています。人工内耳を必要とする患者さんの数は非常に多いのですが、実際に手術を受け装用している方はその一割にも満たないのが現状です。また人工内耳のよい適応である小児の患者さんの割合も、世界に比べるとまだまだ少ないのが現状です。これは人工内耳の有用性がまだ十分に知られていないことが原因の一つと思われます。人工内耳センターでは、これから人工内耳を考えている患者さんに、人工内耳に対する情報を集めたり理解を深める場としても活用していただけるサポート体制も整えております。
信州大学病院人工内耳センターでは、小児の患者さんに対しては「聞くことを通して言葉を学習し成長すること」、また大人の患者さんに対しては「もう一度聞こえを取り戻し、豊かな生活を送ること」を目標にしています。各スタッフはこれらの目標の実現のため、それぞれの専門性を活かしながら人工内耳装用者のためのより良い環境づくりをめざしています。
人工内耳装用者のための
より良い環境づくりをめざして
信州大学附属病院人工内耳センター センター長
信州大学医学部附属病院耳鼻咽喉科 科長
宇佐美 真一
「人工内耳」は補聴器では十分に補聴できなかった最重度の難聴を持つ方に新たな聴こえの可能性をもたらしました。
きこえのしくみ
外耳から空気の振動として伝わった音は鼓膜で受け止められ、中耳を経て内耳に伝わります。音の信号は内耳(蝸牛)で電気的な信号に変換され聴神経を通って脳へ伝わり、はじめて音声として認識されます。
内耳障害と人工内耳の適応
高度の内耳障害があると、音を電気信号に変換できなくなります。人工内耳は内耳の代わりに音声を電気信号に変換し、聴神経に電気信号を送りこむことによ
り聴こえを取り戻す画期的な医療技術です。
人工内耳適応基準(日本耳鼻咽喉科学会)抜粋
年齢:小児 1歳6ヶ月以上 成人 18歳以上
聴力および補聴器の装用効果:聴力検査にて両耳とも90dB以上である場合。かつ少なくとも6ヶ月以上にわたる最適な補聴 と療育によっても効果のないもの。
その他前提条件として:成人 本人の意欲と周囲の支援体制
小児 ハビリテーションおよび教育支援体制
禁忌 : 中耳炎などの感染症の活動期
慎重な判断が必要 : 画像診断にて人工内耳を挿入できるスペースが確認できない。中枢性聴覚障害。重篤な合併症など
手術
手術は全身麻酔で行われ3時間程度で終わります。人工内耳の手術手技はすでに確立されており熟達した専門医であれば安全に行うことができます。人工内耳の手術のリスクは他の耳の手術と同程度であり、特にリスクが高い手術ではありません。
重度の聴力損失をもつ方やそのご家族に人工内耳に関する情報提供やガイダンスを行います。手術の前に専門家チーム(医師、言語聴覚士、教育関係者など)が聴力・補聴器装用効果や身体的検査などの総合評価を行います。この情報にもとづいて最良の選択ができるように話し合いをもち、最終的な方針を決定します。
音入れ
手術から3週間ほど経過すると、術部が完治します。そこで埋め込んだ人工内耳から聴神経を刺激するための一連の作業が行われます。これを音入れと呼んでいます。
マッピング
人工内耳は、インプラントを埋め込んだ後、そのまますぐに聞こえるようになるわけではありません。言語聴覚士がスピーチプロセッサーを調節して、さまざまな条件項目を個人ごとに測定し、それに従ってマップと呼ばれるデータをつくります。
いままで聞こえなかった小児が、人工内耳によって得られる聴覚を充分活用するためには、ハビリテーションが必要です。当センターのハビリテーションプログラムは、人工内耳装用児は聴くことをとおして話し言葉を学習することができる、また聴こえや言葉は、ご両親やご家族との豊かなコミュニケーションの中で育つという基本的な考え方の上に成り立っています。センターでは年齢や言語習熟の状態に合わせて指導いたします。また成人の方は、定期的に人工内耳の調整を行う際に、言語聴覚士が良く聞こえているかどうかを評価し、その結果に基いて機器の調整を行います。
小児の場合、人工内耳による聴覚を活用するためのトレーニングを行います。成人の方は、定期的に人工内耳の調整を行います。
手術後3週間程度で人工内耳を使い始めます。使い始めた後も、より良く聞こえるように調整を繰り返します。
手術は信州大学病院にて行われます。手術は全身麻酔で行われます。手術後2〜3週間程度の入院が必要です。
聴力や補聴器装用効果などのデータを基に十分なカウンセリングを行い、最良の選択ができるよう支援します。