研究紹介

 当研究室で行なわれている主な研究の概要を紹介します.研究概要のpdfファイル



バクテリアによる廃水・廃棄物処理技術

 

廃水・廃棄物の処理について

 家庭や工場から排出される廃水の処理方法としては,ろ過や沈殿といった物理処理,オゾンや凝集といった化学処理,そしてバクテリアなどの微生物を利用した生物処理があります。一般に有機物を多く含む廃水に対しては生物処理が,無機物を多く含む廃水に対しては物理・化学処理がおこなわれます。一方,廃棄物の処理方法としては,我が国では従来,焼却が広く用いられておりましたが,近年,ダイオキシン問題やリサイクルの観点からコンポスト化などを含めた生物処理が注目されております。

当研究室では,下水処理場や浄化槽から発生する有機性汚泥,工場廃水,生ゴミなどを処理対象とした様々なバクテリアによる生物処理の効率化の研究をおこなっております。

 

処理に用いられるバクテリア

 バクテリア(細菌)には生きていく際に,人間などと同様,酸素を必要とする好気性バクテリアと,酸素を必要としない嫌気性バクテリアの二種類がおります。夏にドブから卵の腐ったようなにおいが発生したり,ドブの中の泥が黒くなるのは嫌気性バクテリアの働きによるものです。またおならが燃えるのも、腸内にいる嫌気性バクテリアであるメタン生成細菌の働きによるものです(ちなみにメタンガスは無色無臭のガスです)。一方,好気性バクテリアは下水処理場や浄化槽において下水や生活排水の処理に利用されております。

 当研究室で研究しているメタン発酵や水素発酵は嫌気性バクテリア,好気性消化は好気性バクテリアの働きによるものです。

 

メタン発酵について

メタン発酵では,廃水や廃棄物に含まれる有機物を酸生成細菌とメタン生成細菌の作用により,メタンガスと炭酸ガスに分解することで処理いたします。処理速度や処理水質は好気性バクテリアによる処理(好気性処理といいます)より劣りますが,処理に必要なエネルギーは好気性処理より少なく,しかもメタンガスというエネルギー源が回収できます。嫌気性処理(嫌気性バクテリアによる処理)は古くから高濃度の廃水や汚泥等の処理に使われてきましたが,近年,メタン発酵を担うバクテリアが小さなボール状の固まりを形成する・アとが発見され,その性質を利用した高性能処理槽の開発の結果,食品工場をはじめ多くの工場廃水処理施設で使用されています。

水素発酵について

水素ガスは環境に対する影響が少なく,クリーンなエネルギー源として期待されております。水素を発生する微生物には藻類,光合成細菌,発酵細菌などがおり,世界中で研究が進行しています。当研究室では発酵細菌による有機物からの効率的な水素生成の研究をおこなっております。

 

好気性消化について

好気性バクテリアは酸素を利用し,有機物を二酸化炭素と水に分解します。好気性バクテリアは一般に強力な浄化能力を持ち,下水処理場や浄化槽において,排水処理の中核を担っております。ただし好気性処理は運転時にエネルギーを多く消費することから,比較的低濃度の廃水(たとえば下水など)処理に用いられ,高濃度の廃水処理では嫌気性処理が用いられております(もしくは好気性処理との併用)。しかしある種の好気性バクテリアは通常の好気性バクテリアと較べて,非常に強力な浄化能力を持つことがわかり,そのようなバクテリアを選択的に利用することにより,汚泥などを効率的に処理(汚泥,し尿,生ゴミなどの生物処理を特に消化といいます)し,同時に処理に必要なエネルギーを減らす研究を当研究室ではおこなっております。

 

バクテリアの挙動の解析

以上,述べてまいりましたバクテリアを利用した処理においては,バクテリアの数や活性(元気のよさ)を知ることは,大変重要です。当研究室ではバクテリアの遺伝子(バクテリアの種類により遺伝子配列は微妙に異なります)に結びつくDNAプローブ(特定遺伝子に結びつく核酸に染色剤を結合したもの)を用い,特定のバクテリアの数を測定する研究をおこなっております。


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