幾何学的歪みの補正
マルチスペクトルデータ(一般に、衛星マルチスペクトルデータと航空機マルチスペクトデータがある)には、データ収集時の衛星の姿勢の変化、地球の自転、地表面の比高等の様々な要因による幾何学的歪み(位置歪み)が含まれており、いわゆるリモートセンシングデータ上に表現される地表面の物体の位置は、実際の位置とは異なったものになっている。
マルチスペクトルデータを有効に利用していくうえで、地図座標系と整合をとるといった幾何学的歪みの補正処理を行う必要がある。マルチスペクトルデータが内包する幾何学的歪みについて大別すると、次の3つに分けて考えることができる。すなわち、
@走査時におけるプラットフォームの状態による歪み
Aマルチスペクトルデータの内部的要因による歪み
B対象とする地形の起伏による歪み
であり、@は走査高度の変化、対地速度の変化、回転、ピッチング、ヨーイング、ローリングといった要素が原因で起こる歪みである。Aは走査鏡の回転が等角速度であるために起こる歪みで、一般にパノラミック歪みといわれる。Bはスキャナの直下点から離れた位置にある任意の高さを持つ対象物が、スキャナと対象物を結んだ延長線上に投影されるために起こる歪みである。
幾何学的歪みの補正法としては、システム補正とGCP(Ground Control Point:地上基準点)を用いた補正の2種類がある。このうち、システム補正は歪みの要因が既知である場合に用いられる手法であり、具体的には地球の自転による歪みや衛星の姿勢変化による歪み等に対して用いられる手法である。
システム補正はデータ収集時に統一して行われるものであり、補正済みののCCTデータを使用する限り、一般のユーザーがこの補正を行う機会はあまり多くない。しかし、一般に衛星の姿勢に関するデータは精度が低く、利用目的によってはシステム補正だけでは十分な幾何学的精度が得られない場合が多い。LANDSAT/MSS、TMデータのバルク補正はこのシステム補正である。
一方、GCPを用いた補正はシステム補正のみでは必要な幾何学的精度を得ることができない場合に用いられる手法である。すなわち、画像上で地上座標を測定することができる点(GCP)を選定し、これらの点を用いて画像座標系(カラム、ライン)と地上座標系(X、Y)との間で変換式を選定して、画像データを地上座標系に対応するように変換するといった補正である。
GCPを選定するためには、通常、画像データと補正の基準になる地形図を見比べて両方において明確に識別できる点を探索する必要があり、非常な労力と時間を要する。また、この選定作業には写真判読や地図判読等の技術を必要とするため、これらの知識のない初心者には困難な作業となることが多い。
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