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研究会

信州大学経法学部において月1回のペースで開催される「研究会」は、経済学、経営学、法学、政治学など、社会科学諸分野の研究成果 について報告・議論する場を提供し、さまざまな研究トピックスに関して相互理解を深めるとともに、研究者間でのコミュニケーションの促進を図ることを目的としています。
構想段階の研究や調査進行段階の研究も発表可能であり、研究者間の意見交換を通 じて研究内容の発展を図るなど、建設的な議論が展開されています。また、報告者は信州大学の教員にとどまらず、他機関の研究者も積極的に招き入れ、より広範なトピックスを取り扱うことを目指しています。
開催スケジュールと内容については、本ホームページに随時掲載する予定です。

  • 講演者 幸崎 寛大
    所 属 信州大学大学院(学生)
    日 時 2022年1月13日(木)17:00~18:30
    場 所 信州大学経法学部 研究棟4階 研究会室
    題 目 賞金格差がもたらすコンテストへの影響に関する実験研究
    概 要 本論文は、Moldovanu and Sela (2001)が論じたコンテスト・モデルと、それを実証的に分析したMuller and Schotter (2010)の実験モデルを基に、コンテストの勝者が獲得する賞金構造の変化が、参加者の行動にどう影響するか検証するものである。そのために、先行研究によって行われたコンテストに、優勝者が最大額の賞金を獲得し準優勝者がそれよりも小さい額の賞金を獲得するという、「賞金格差ありコンテスト」を加えた経済実験を、z-Treeを用いて実施した。分析の結果、賞金格差ありコンテストは他のコンテストに比べ効率的なコンテストを実現したうえ、参加者の過剰努力と過少努力の二極化を緩和したことが分かった。しかし、才能が高い参加者が期待以上に成果を発揮せず、全体的に過少努力の特徴が見られ、主催者の観点からは課題が残る結果となった。しかし、先行研究には見られない参加者の行動を引き出すなど、賞金構造の変化が参加者の行動の変化をもたらす可能性が示唆された。
  • 講演者 広瀬 純夫
    所 属 信州大学
    日 時

    2021年12月22日(水)16:30~18:00

    場 所 信州大学経法学部 研究棟4階 研究会室
    題 目 混合戦略で考える「信号のない横断歩道での自動車の一時停止」:法遵守の傾向への影響要因の分析
    概 要 本研究では,「信号のない横断歩道での自動車の一時停止」を題材として,法遵守への影響要因を検討した.法遵守を促す場合,取締強化による摘発可能性の上昇や罰則の強化など,行為者へのインセンティブに働きかけることが議論されがちである.実際,「信号のない横断歩道での自動車の一時停止」では,歩行者妨害の摘発が増えると,一時停止率が改善する傾向を確認できる.さらに,単位人口当たりの交通事故発生件数への影響要因を分析すると,歩行者妨害の摘発頻度が上がれば.事故発生頻度が低下することから,取締りの強化が事故抑止に効果があることも確認できる.一方で,歩行者妨害の摘発頻度をコントロールしても,「信号のない横断歩道での自動車の一時停止」の交通事故発生頻度への影響も,統計的に有意である.つまり,取締り強化以外の事故発生への影響要因を,「信号のない横断歩道での自動車の一時停止」は反映している可能性がある.そこで,本研究では,取締強化のような行為者へのインセンティブの効果以外の要因として,当該行為の相手となる主体,つまり歩行者の特性が,ドライバーの法を遵守する傾向に影響を及ぼしている可能性を検証した.具体的には,信号のない横断歩道での歩行者とドライバーの関係を,同時手番のゲーム的な状況で捉え,ドライバーが,混合戦略に従って"止まる"か"止まらない"かを選択している可能性を検討した.分析上のポイントは,混合戦略で,ドライバーが"止まる"を選ぶ確率は,歩行者側の利得の構造に依存する点である.2018年から2020年の,JAFが調査した「信号のない横断歩道での自動車の一時停止」の都道府県別データをパネルデータとして検証したところ,高齢者人口比率や,実収入,家計支出に占める教育費割合などの歩行者側の特性が,ドライバーが"止まる"を選ぶ確率に影響を及ぼしていることを確認した.たとえば,高齢者が横断歩道に面して立っている時,一時停止をしても,歩行者の方が笑顔で譲ってくれることがある.これは,歩行者にとって,ドライバーが"止まる"を選んだ時に,"渡る"ことと"渡らない"ことの利得の差が小さい(たとえば,急ぐ用事があるわけではないので,すぐにわたる必要はない)ことに起因する可能性がある.こうした歩行者側の利得の構造は,ドライバーが"止まる"を選ぶ確率を高くする.また,ドライバーが"止まらない"時に,歩行者が"渡る"と,事故に遭って怪我を負う可能性が高い.事故に遭う期待損失は,所得水準が高いほど大きくなる.期待損失が大きくなること(ドライバーが"止まらない"時に,歩行者が"渡る"時の歩行者の利得が低くなること)は,ドライバーが"止まる"を選ぶ確率を,高くする方向に作用する.実収入が高い,あるいは,上級材である教育費の支出割合が高いと,一時停止率が高くなる傾向は,こうした歩行者側の特性を反映したものと考えられる.
  • 講演者 糟谷 祐介氏
    所 属 神戸大学
    日 時 2021年11月24日(水)13:30~15:00
    場 所 信州大学経法学部 研究棟4階 研究会室
    題 目 Stability, Strategy-Proofness, and Respecting-Improvement Properties
    概 要

    In priority-based two-sided matchings, a respecting-improvements property of a mechanism requires that an agent should get weakly better off when she is assigned a higher priority. Not only is it a normative desideratum, it is also important for ex-ante investments and for disclosure of non-preference information. In the general model of matching with contracts, we demonstrate that respect for improvements is closely related to strategy-proofness (with respect to preference information): With a number of different sets of assumptions and two definitions of improvements, a stable mechanism respects improvements if and "almost'' only if it is strategy-proof, although the precise statements vary across different layers of our assumptions. Our results suggest that strategy-proofness is desirable not only as a strategic property, but also for its normative implication. We also provide a new sufficient condition for the cumulative offer mechanism to be strategy-proof, which also suffices for respect for improvements.

  • 講演者 橘高 勇太氏
    所 属 神戸大学学振PD
    日 時 2021年10月20日(水)16:30~18:00
    場 所 信州大学経法学部 研究棟4階 研究会室
    題 目 Dual Role of the Platform and Search Order Distortion
    概 要 本研究では、独立した業者の製品販売を仲介するのみならず、自らも並行して製品を販売するような「二重の役割」をもったプラットフォームによる、自社製品を最初に探索させるような自己優遇行動の影響を、消費者探索理論の枠組みを用いて分析し、好ましい政策を検討する。本研究で明らかになったのは以下の3点である。1.プラットフォームは、消費者が自社商品を最初に探すように誘導する誘因を持ちうる。2.このような自己優遇行動は、価格競争を弱め、販売者達が相対的に高い価格を設定することを可能にする。価格は手数料率に応じて上昇し、プラットフォームは手数料率が十分に低くない限り、他社製品よりも自社製品に高い価格を設定する。3.上記のような自己優遇行動があるとき、垂直分離政策によって厚生を改善することが可能である。しかし、自己優遇行動のみを禁止するだけの政策は、手数料率や、消費者の探索コストによってはかえって厚生を損なう可能性がある。
  • 講演者 三上 亮氏
    所 属 大阪大学社会経済研究所特任研究員
    日 時 2021年10月20日(水)12:45~14:15
    場 所 信州大学経法学部 研究棟4階 研究会室
    題 目 Passive or Active? Behavioral Changes in Different Designs of Search Experiments.
    概 要 本研究では、探索理論実験におけるデザイン間の探索行動の比較を行う。既存の探索理論実験は背後にある理論モデルが同じであるにもかかわらず、複数の実験デザインが存在する。我々は探索理論実験のデザインを探索方法の違いに応じて1)受動的、2)準能動的、3)能動的、の3つに分類して行動の比較を行なった。また、行動の原因を分析するために、探索行動の個人差を説明する指標であるリスク態度の測定も実施した。その結果、探索方法が異なると行動が変わることが示された。全体的な傾向として能動的な実験デザインは、他の二つのデザインと比較して、探索の回数が多く、理論的な予測に最も近い。個人のリスク態度に着目すると、リスク回避的な参加者が受動的なデザインで探索を早く打ち切る傾向が強く観察された。

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