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河合健司先生(東京リベルテ法律事務所)の講義が行われました

河合健司先生(東京リベルテ法律事務所)の講義が行われました

2018. 10.03

  • 現代法務

 平成30年10月3日、平成30年度「現代法務」の第1回として、弁護士で元仙台高等裁判所長官の河合健司氏(東京リベルテ法律事務所所属)の講義が行われました。

 はじめに、先生が裁判官に任官してから現在に至るまでの経歴について述べられた中で、司法研修所で刑事裁判科目の教官をなさっていたときのお話をされました。
 司法研修所では7年間延べ600人ほどの修習生を指導されたそうですが、司法試験の合格そのものが最終目的になってしまっている人と、試験はあくまで資格取得の手段であってその先を見据えている人とでは、実務の場に出てからの活躍ぶりが大きく違うそうです。実際に先生が指導なさった修習生の一人に、司法試験の合格に10年ほど要したものの、困っている人を助けたい志の下に弁護士になった方がいらっしゃるそうですが、その方は今所属弁護士会の要職も務めながらいきいきと活躍しているとのことでした。
 人間はやりたいことに対して目標をもってやらないと成長できない、何が自分のやりたいことであるかを探すのが一番大事であり、そのためには努力を惜しんではならないと述べられました。

 次に、「裁判所」という職場が実際にはどのような職場であるかというお話をされました。
 裁判所は外から見たイメージとしては固い職場という印象が強いけれども、実際に内部はとても良い環境だそうです。特に女性にとっては最高の職場であり、男女差別がないのはもちろん福利厚生も恵まれており、産休・育児休暇についても充実しているそうです。さらに、人事評価も長期のスパンで行われるため、目先の成果にとらわれることなく仕事に取り組める点も裁判所ならではの良さであると述べられました。
 つづいて、先生が裁判官を務めていらした頃のエピソードについてお話をされました。そこでは、判決を下すにあたり極めて慎重に証拠に基づいて事実を認定するよう心掛けていたことや、判決を下すまでに抱える裁判官としての苦悩、裁判員裁判で裁判員として参加された方々の熱意ある姿勢に頭が下がったことなどが語られました。

 そして、裁判官(社会人)に求められる資質・能力、これからの時代に求められる裁判官(社会人)像についてお話をされました。その能力とは、「人の話を聴く力」「共感力」「多角的視野」「決断力」「法的思考力」などであると述べられました。裁判官は、事件について事実を知らないところからスタートするため、当事者から話を聴くことが非常に重要であり,また,得られた事実を個別的に分析しながら全体を見通すことを繰り返すことが、誤りのない事実認定を行うために大切であるそうです。こうした能力を土台に、急激に変化する時代の流れを感じ取る感性を持ち合わせながら、あくまでも軸足は「人間」において、その営みに対する深い洞察力と物事の本質を見抜く力を備えた人物こそが、裁判官のみならず社会人にもこれからの時代に求められる姿であると語られ、講義を締めくくられました。

  • 東京リベルテ法律事務所 河合健司氏
  • 講義風景

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