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川名 政幸 先生(セイコーエプソン株式会社 取締役執行役員)の講義が行われました

川名 政幸 先生(セイコーエプソン株式会社 取締役執行役員)の講義が行われました

2018. 05.30

  • 現代産業論

 平成30年5月30日、平成30年度現代産業論 (産業論特論) 第6回の講義として、セイコーエプソン株式会社 取締役執行役員 人事本部長兼CSR推進室長 川名 政幸氏から「セイコーエプソン働きかた改革の取り組み」と題して講義が行われました。

 セイコーエプソン株式会社は1942年の創立以来、ものづくり企業としてのDNAを受け継ぎ、発展してこられた会社です。2017年度連結売上収益は11,021億円、グループ全体の従業員数76,391人(うち単体12,502人)にのぼり、グループ会社は海外も含め87社と、世界に誇るトップ企業に成長され、今後の情報通信技術の進展により、益々の躍進が期待されます。

 これまで築き上げてきた事業基盤を生かし「省・小・精の価値」で、人やモノと情報がつながる新しい時代を創造するというビジョンステートメントを掲げた「長期ビジョンEpson25」を実現するために、様々な取り組みを始められています。

 省・小・精の価値の提供により、4つのイノベーション(①高い環境性能と循環型の印刷環境を提供するインクジェットイノベーション、②映像でコミュニケーションを革新するビジュアルイノベーション、③着ける・使う喜びを提供するウエアラブルイノベーション、④ロボットが人々を支える未来を実現するロボティクスイノベーション)を実現、「人材」「技術」「生産」「販売」「環境」という事業基盤を強化してエプソンの発展を支えるという、全体構造について御説明いただきました。

 経営モデルとして、製品の企画、設計、製造、営業まで一貫してまかなう「垂直統合型ビジネスモデル」を取っており、自社内のバリューチェーンが長いため、従業員の目線を合わせるためにも理念の共有がより重要となる、と述べられました。また、製品開発は、自社の技術力が出発点になる(技術オリエンテッド)のではなく、お客様のニーズ、マーケティングが出発点となる(ニーズオリエンテッド)というポリシーに立っていることも御説明いただきました。

 次に、社会に出る前の学生に向けて「なぜ残業が発生するのか」「働くことに関する法律」「セイコーエプソン働きかたに関する主な制度」をテーマにお話しいただきました。

 エプソンのものづくりの流れと職種(バリューチェーン)を示し、具体的に事業の流れの中でどのようなポイントで残業が発生するかを事例を挙げて御説明いただいたり、働くことに関する法律やセイコーエプソンの36協定、エプソン独自のルールとして長時間労働者の健康管理のために実施している施策や、働きかた(勤務形態)の種類についても具体的に述べられました。また、社員が私生活も充実させながら安心して働き続けられるよう各種制度を導入しており、仕事と生活の両立ができる環境づくりを推進しています。

 セイコーエプソンの働きかた改革は、長時間労働の常態化から脱却してワークライフバランスを実現し、多様性を持った社員がメリハリをつけていきいきと働くことで、先述の「長期ビジョンEpson25」の実現を目指しています。

 長時間労働の削減、労働生産性向上を目指し全社で展開する主な取り組みを何点か御紹介いただきました。具体的には、今年度(2018年度)においては、①労働時間の短縮(一日の労働時間を8時間から7.75時間に短縮)、②定時退社日の徹底継続(水曜日と金曜日を定時退社日として設定)、③計画年休の取得推進継続(年間5日)、④スカイプ会議の積極利用(離れた場所で働く人と同じ情報を見ながら会議を行う)、その他にも事業部単位で目標を定め、地道な取り組みを継続されています。

 セイコーエプソンは、ダイバーシティ(多様性)の尊重、中でも日本において特に課題である「女性活躍推進」についてプロジェクト体制で推進しています。これは、今後予想される少子高齢化、労働力人口の減少等の環境変化に備え、多様な人材に活躍してもらうとともに、多様なエンドユーザーのニーズに応えるためにも重要となります。

 具体的な取り組み事例として、外部講師を招いて講演会を毎年開催、経営層と女性社員との対話会の実施、育児介護期の在宅勤務導入や託児スペースの設営等、いくつか御紹介いただきました。特に、現場の管理職がダイバーシティ推進の当事者であることを意識づけることが、組織のマネジメントを変えるために重要であると強調されていました。

 社外・社会からの評価として、女性活躍推進法に基づく優良な取り組み企業として「えるぼし」最高ランクの3段階目に認定されているほか、次世代法に基づく子育て支援の優良企業として「プラチナくるみん」の認定も受けており、また、東京証券取引所と経済産業省が選定する「なでしこ銘柄」にも選ばれました。健康経営の分野では、2年連続で「健康経営優良法人ホワイト500」に認定されています。

 最後に、「多様な人材にそれぞれの人生のステージに応じていきいきと働いてもらうことで、会社も社員も成長していく。そのために長時間労働の是正を含む働きかた改革を推進していきます」と述べられ、講義を締めくくられました。

  • セイコーエプソン(株) 取締役執行役員 川名政幸氏
  • 講義風景

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