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しらい じゅん

白井 純

日本語学 准教授

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「学知アーカイヴ」としての藩旧蔵古典籍シンポジウム終了

「学知アーカイヴ」からみた古典籍の移動と利用

3月15日(木)に中央図書館セミナー室で開催した「学知アーカイヴ」としての藩旧蔵古典籍」シンポジウムは盛会のうちに終了しました。
お越しいただきました方々に感謝申し上げます。

今回の講演ならびにシンポジウムのテーマは、典籍の移動状況についてです。

はじめに山田健三氏から、古典籍、とくに典籍群、蔵書としての古典籍には、地域の文化、教育、歴史などの特徴が現れているという「学知アーカイヴ」の考え方と、プロジェクトの紹介があり、その後、白井から全体の概要を簡単に説明しました。

諏訪市博物館の嶋田彩乃氏からは、高島藩旧蔵典籍を基盤とする「長善館資料」の来歴について、蔵書印の調査により、明治時代に高島学校を経由しない典籍群の移動ルートがあったという新事実が紹介されました。
真田宝物館の山中さゆり氏からは、「松代文庫」の典籍の由来について、藩主真田家の典籍が藩校の典籍に貸し出され、藩校の典籍として伝来するとの紹介がありました。
お二人の話を総合すると、素朴に藩校の典籍と思われていたなかには、実際には様々な経緯で加わった典籍もあることが分かり、蔵書群として理解する際にはそれを理解しておく必要があることがみえてきます。

信州大学教育学部の西一夫氏からは、近世と近代の教育制度からみた高島藩旧蔵典籍の蔵書の特徴について紹介がありました。教育上の典籍の必要性と利用形態に注目した新しい視点の提示であり、蔵書目録を利用したインスペクション(照合作業)とあわせて、なぜそこにその書物があるのか、という点からも典籍群の移動を考える必要があることが分かります。

原本閲覧講習会、和本に親しむ

高島藩旧蔵典籍の原本閲覧では、古典籍に触る機会の少ない方にとっては貴重な機会となったようで、好評でした。

ところで、和本は壊れやすいと思っている方もいると思いますが、そんなことはありません。
ボールペンなど消えない筆記具は典籍の近くで出さない、手はそれなりにきれいにする、慣れないうちは机に置いて読む、などの最低限必要なことを守れば、超絶貴重書なければ基本的に問題ありません。
むしろ、適度に閲覧して空気に当てるほうが湿度管理の意味で長持ちするという話もあるくらいですから、汚損をおそれて秘蔵するのは勿体ないばかりか、典籍にも良くないのです。

講習会ということで始めましたが、興味のある典籍に適当に群がって、講師や参加者で詳しい方々が自然と解説を始めるという雰囲気が良かったと思います。

藩旧蔵古典籍の近代的意義

シンポジウムでは、会場からも活発な意見が出て内容の濃いやりとりがありました。

高遠藩で典籍をめぐって士族と平民が対立し、仲裁に入った県庁によって一部が徴収されるという事件の影響により、長野県、とくに旧筑摩県内の藩旧蔵古典籍も同様に徴収され、徴収分が長野師範学校の蔵書となり現在の教育学部図書館「藩文庫」に、地元の典籍はそれぞれの地域が保存して現在に至るのですが、そこには、古典籍を利用するという視点、地域にその典籍を残すことの意義を考える必要があるでしょう。
「長善館資料」「藩文庫」というと江戸時代の藩校の典籍というイメージがありますが、実際には近世という時代の遺物としてだけではなく、典籍の利用をとおして近代の姿をも映し出すものだ、という基本的理解を、会場の参加者が共有できました。

「藩旧蔵古典籍」がどういうものなのか、大きなイメージが形成できた、有意義な講演とシンポジウムになったと思います。
手前味噌ですが、私としても「学知アーカイヴ」のコンセプトが有効であることが確信できた良い一日になりました。

講師の皆様、会場にお越しの皆様、会場を提供していただいた中央図書館と司書の方々には、改めて御礼申し上げます。
ありがとうございました!

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