教員紹介

おおぐし じゅんじ

大串 潤児

歴史学 教授

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こんなことしています(研究)

沖縄紀行 2013・夏 その1

歴博沖縄調査

機内より伊江島をのぞむ

  2013年8月4日、午後に羽田を飛び立った飛行機は、16:00まえには那覇に着きました。   今回は、安い便をとったので機内の落語もたのしめませんでしたが、雲の下の島々を楽しむことが出来ました。伊江島のすがたも-タッチューやアメリカ軍飛行場も-はっきりと見ることが出来ました。   今回の沖縄行きは、国立歴史民俗博物館の共同研究調査および第5室展示(近代)リニューアル委員会の予備調査の2つを兼ねたものでした。   「20世紀における戦争」以来の共同研究(これまでの沖縄調査についてはリンク先を参照)では、「軍隊と地域社会」「外地の視点」「地方都市モダニズム」という視角クロスさせる課題設定を意識してきましたが、そのうちまだきちんと調査していない部分が、沖縄戦以前の沖縄地域社会論ということでした。それは、村落構造をふくんだ社会史論であり、また那覇・首里のモダニズムを介した沖縄の近代思想、社会運動の史的解明という問題、その延長線上に、沖縄戦や戦後沖縄の社会・文化運動をどのように構想するか、という「問い」でもありました。   リニューアルが企画されている歴博第5室展示に沖縄近代史、あるいは近代沖縄を展示する、そのためには沖縄近代史、沖縄における近代地域社会史の現状を知っておく必要があります。   今回の旅はそうした課題をもったものでした。

大宜見村へ

大宜味村史編纂室にて

  今回の調査で1つのクライマックスとなるのは国頭郡大宜味村の調査です。   周知のように大宜味村は、以下の点において沖縄近代地域史において注目されてきた地域の1つです。 (1)1920-30年代社会運動の構造転換(田港朝昭・安仁屋政昭、山城善光『山原の火』)。       →20-30年代の近代思想の地域への流入・受容 (2)集落の持つ意義とその共同性…消費組合運動、戦後の農業協同組合店舗(共同売店)。 (3)女性史=洗骨廃止・火葬場設置運動(堀場清子『イナグヤナナバチ』ドメス出版) (4)戦争と地域社会-翼賛体制(大城将保、荒川章二)    沖縄連隊区司令官「沖縄防備対策」(1934年)   福地昿昭『村と戦争 喜如嘉の昭和史』「村と戦争」刊行会1975 (5)戦後改革から復帰運動へ(福地昿昭『沖縄を駆け抜けた男』)   これらの先行研究で用いられた史料(特に区有文書)の所在確認と現況調査が主目的となりました。   

まぼろしの史料に

戦後の、饒波(ぬうは)字文書

  結論的にいうと私達が調査しようとした史料群は大宜味村には残っていませんでした。   火葬場設置運動や『村と戦争』、共同売店など興味深い地域であった喜如嘉の区有・集落文書も新しく公民館を立て替える際に処分したそうです。   『大宜味村史』や村内各字誌(喜如嘉や饒波[ぬうは]、塩屋など)、そして福地昿昭『村と戦争 喜如嘉の昭和史』や堀場清子さんの著作に収録されているものが現存する唯一の手がかりとなってしましまいた。   大宜味村政改革運動については田港朝昭さんの論考や『那覇市史』第2巻中(3)に関連史料が収録されています。   しかし、饒波(ぬうは)区など若干の戦後史料が残っていました。アメリカ軍からの基地建設労働調達の関連文書、引き揚げ、食糧問題など、占領から1950年代の沖縄地域社会を、集落のレベルから考えることが出来る貴重な史料でした。   本土や那覇ではなかなか手に入れることが難しい郷土誌・史や社会運動関係者の著作も 見ることが出来ました。

大宜味村役場庁舎

役場庁舎前にて

  大宜味村では村史編纂室の方々にたいへんお世話になりました。午後は村長さんもおいでください、貴重な情報をお寄せ下さいました。   新城さんはじめお世話になった方々に御礼申し上げます。   ちなみに、大宜味村史編纂室が入っている建物は旧大宜味村役場庁舎です。1925(大正14)年竣工、沖縄県では初めての鉄筋コンクリート造りの瀟洒な建物です。   大宜味は大工職人になる人が多く(その分、地域でほとんど農業が出来ない)、「ヤンバル大工」として著名な人びとがこの建物を建てたわけです。

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