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日本近現代史ゼミ 春のフィールドワーク2013 諏訪

諏訪へ

下諏訪町の新聞店の引き札(日清戦争の頃)

  2013年5月10日、日本近現代史ゼミ・春のフィールドワークを行いました。今回、主に訪ねる先は2つあります。   1つは、片倉館です。周知のように、近代長野県を代表する産業は製糸業です。そしてなかでも代表的な企業が「片倉組」です。片倉館は、地域住民の「保養施設」として「片倉組」が建てた浴場付き施設で、2011年に「国重要文化財指定」となったものです。   もう1つは、諏訪郡中洲村(現在、諏訪市)にある「風樹文庫」です。中洲村出身の岩波茂雄ゆかりの図書館で、岩波書店の新刊書籍が基本的にはすべて所蔵されている特色ある図書館です。   それでもやはり諏訪に来たのでまずは、下諏訪町の「諏訪湖博物館」を訪れました。   訪問した日には、たまたま開館20周年を記念した「引き札」展が開催されていました。ふるいものでは近世のものもありますが、基本的には明治中頃から大正期までの商店広告です。旧高島藩士で下諏訪の今井家に残されていた貴重なものです。   今回の展示されている「引き札」は、図柄は大阪の印刷業者が(最初は木版だがやがて機械刷り)、暦は松本の業者が刷ったという特徴を持っています(館長さんのお話し)。不勉強でこの企画展を知っていたわけではないのですが、諏訪湖の自然誌とともに貴重な文化財にふれることが出来ました。   

みそ蔵でお昼

「丸高蔵」のレストラン「みそ茶屋 千の水」のとんかつ

  高島城三之丸に創造して90年以上のみそ蔵「丸高蔵」を訪ねました。もともとは味噌造りの工場見学を企画していたのですが、残念ながら都合でかないませんでした。   それでも蔵でつくった味噌をつかった「とんかつ」をたんのうしました。この蔵の味噌は「神州一味噌」のブランド、その発祥蔵です。1916(大正5)年、「真澄醸造元一九代伊兵衛の命(めい)により、丸高醤油の製造販売を始め、その後丸高味噌の製造販売を開始」、関東市場 において味噌販売が好調だったため「神州一味噌」ブランドを立ち上げたそうです(「みその丸高蔵 パンフレット」から)。   時間の都合で高島城公園は通りすぎただけ。片倉館に向かいます。     

片倉館

テラスでの記念撮影

  「片倉組」二代目片倉兼太郎は、1920年代にヨーロッパ、北アメリカを視察しました。その際、兼太郎は、地域住民の福祉施設・保養施設が大変充実していることに感銘を受け、長野の地でも同様の施設を作ろうと構想しました。   温泉が出ていることから製糸会社・工場が集中している平野村(現在、岡谷市)ではなくこの諏訪湖畔の地に1928(昭和3)年、「片倉館」が完成しました。設計者は森山松之助、台湾総督府建設も手がけています。オパールグラスをうめこんだモダンな浴場と瀟洒な外観が現在でも市民に愛されています。  この度は、普段なかなか見せてもらえない大広間や天井裏、建物の由来などについて館長理事の林さんにご案内戴きました(林さんは片倉家一族の方)。

信州 風樹文庫

夏目漱石「こゝろ」原稿(複製)

  湖畔をあとにし諏訪中洲に向かいます。近くには諏訪上社や平林たい子文学館などがありますが、今回は訪れることが出来ませんでした。   中洲小学校・公民館の近くに「信州 風樹文庫」があります。   2013年に創業100年を迎える岩波書店。創業者の岩波茂雄の出身地である諏訪郡中洲村(現在、諏訪市)では、1946年、地域の青年たちが中心になって地域文化向上のため岩波書店の出版物を岩波書店から譲りうけ、読書会などの文化運動を行って行きました。   小冊子ですが『岩波茂雄と風樹文庫』(岩波書店1993)が手頃な案内です。もう数年前ですが、長野県現代史研究会で故・由井正臣さんに「岩波茂雄と信州」と題して報告していただいたことを思い出します。「風樹文庫」の歴史については記念誌編集委員会編『信州風樹文庫50年』(諏訪市教育委員会1997)がありますが、2007年に60周年のむかえ、まだまだ地域文化運動史として研究する余地がありそうです。図書館史・図書館運動史としても注目に値するでしょう。   現在、岩波書店が出版する書物はこの風樹文庫にすべて収められて、地域文化に(特に子ども達に)大きな意味を持つ図書館となりました。   限定350部しか出版されなかったレオナルド・ダ・ヴィンチの手稿を翻刻した稀覯本もあります。夏目漱石自筆の「こころ」原稿(複製・製本版)も見せて戴きました。   地域にとっての図書館や福祉施設の意味、食の伝統を守る職人さんたち。現代史における地域文化の基礎と、それを下支えする人びとの営みにふれた旅でもありました。   運転手をつとめてくれた浅田さん、大塚さんご苦労様でした。事務的な仕事いっさいを御願いした武内さん、そもそもの企画提案者栗田さん(残念ながら風邪で欠席でした)、ありがとうございます。

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