教員紹介

おおぐし じゅんじ

大串 潤児

歴史学 教授

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こんなことしています(授業など教育) ゼミの活動

2011春 京都合宿

もうひとつの京都へ

伏見踏査① 第16師団司令部

  2012年2月28日から3月1日,日本近現代史ゼミ2012春合宿が行われました。有志で1年生(4月から2年生)も参加してくれて,たいへん楽しい合宿となりました。   今回のテーマは「軍都・伏見フィールドワーク もうひとつの京都」とでもいうべきものです。著名な観光コースには行きませんでした(自由時間を設けましたので,訪れた人もいます)。   今回の合宿では戦争遺跡に平和を学ぶ京都の会編『語りつぐ京都の戦争と平和』(つむぎ出版2010年)がとてもよい導きの糸(ガイド)となりました。また、南京戦にも参加した京都第16師団の兵士の日記を翻刻した仕事がありますが(井口和起ほか編『南京事件・京都師団関係資料集』青木書店1989年)、これらは長年にわたる京都の戦争展運動の成果でもあります。      また、自らの家族の歴史にとって切実な出来事を通してみたものに中西宏次『戦争のなかの京都』(岩波ジュニア新書2009年)があります。出来合いの出来事の解説ではなく,家族(あるいは仕事)という「窓」からみた戦争と京都の歴史が伺える好著です。

歴史のリアリティと博物館展示

伏見踏査② 「師団橋」架橋の石碑

  初日は,立命館大学国際平和ミュージアムを見学しました。展示入り口近くには,日本軍完全装備時の背嚢(リックサック)がおかれていて,試みに持ち上げてみることができます。戦争展運動にかかわってきた井口和起さんの提起(「現代史研究と展示」『歴史評論』526、1994年2月)-モノはそれ自体として展示されるのみならず,あるまとまりをもって展示されるべきである-を具体化したものでもあります。   新京極で美味しい「おばんざい」で夕食。天気が気になりますが,明日は,伏見のフィールドワークです。

軍都・伏見を訪ねて

伏見踏査③ 軍人湯

  翌29日,10:00,京阪電車深草駅集合。朝がたまで降っていた雨もやみ(この日,関東・甲信越は大雪でした),日が差せば暖かな陽気になってきました。戦争遺跡に平和を学ぶ京都の会・福林徹さんの案内で,伏見一帯の戦争遺跡フィールドワークを行いました。   1868年,新政府は鳥羽伏見の闘いで占領した伏見奉行所に士官養成の訓練所を置きました。酒造でも著名な商業町であったこの地には,日清戦後の軍拡期に歩兵第38連隊がおかれ、やがて日露戦後には第16師団司令部が設置されました。師団の設置にともない,騎兵連隊・砲兵連隊・輜重大隊・陸軍衛戌病院・陸軍墓地(現在の石嶺寺)などの駐屯地が整備され、伏見は一挙に「軍都」の色合いを濃くしていきます。龍谷大学沿いに残る「師団街道」「第一軍道」の標識,琵琶湖疎水にかかる「師団橋」などを見学して,第16師団司令部(現,聖母女学院・本館)見学に向かいます。聖母女学院のご厚意により,本館内部も見学させて戴きました。旧奈良街道沿いの「軍人湯」も見ましたが,かつて軍人専用の銭湯であったこの湯屋は,戦没者遺族の家でもあり,戦争のことを忘れないために「軍人湯」と名乗り続けているそうです。陸軍衛戌病院跡碑(現在,国立病院機構京都医療センター敷地)も見学しました。   午後は,明治天皇陵(伏見桃山陵)と乃木神社の見学です。JR桃山駅前は現在ではいささか閑散としていましたが,多くの参拝者のための長いプラットホームが往時のにぎわいを感じさせてくれます。 ※フィールドワークには大阪大学の本井さんも参加して下さいました。その日の夜は,立命館大学の友人・庵逧裕香さんをお招きしての懇親会でもりあがりました。

菜の花のなかで

司馬遼太郎記念館エントランス

  3月1日,関西はよく晴れたおだやかな日でした。時間には余裕のある「ぶらり旅」です。電車をのりついで東大阪市・八戸の里にある「司馬遼太郎記念館」を訪ねました。私は,司馬文学の「よき読者」ではないのですが,2012年度の授業(大衆文化論)の関連で,いくつかの作品および評論(例えば司馬遼太郎『歴史の中の日本』中央公論社1974年),批評を読み進めていましたので,たいへん興味深い場所となりました。   日本海海戦の企画展示が行われていましたが,歴史家からする司馬遼太郎批評については原田敬一『「坂の上の雲」と日本近現代史』(新日本出版社2011年)が最近のものです。ただし,かつて鹿野政直さんが指摘したとおり,彼の「街道をゆく」シリーズは私もうまく批評することがいまだに出来ません。宿題です。   書架および書斎は,彼の作品を生み出す「思索の森」の一端をみたようでした(昨年,秋におとずれた小倉の松本清張文学記念館でも同様に感じた)。記念館内には「菜の花」が活けられ,美しい早春の雰囲気を醸し出していました。   京都駅で「小鯛の笹漬け」と尾張屋の「そば板」を土産に,私は新幹線に乗り,京都あとにしました。

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