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おおぐし じゅんじ

大串 潤児

歴史学 教授

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2011年 飯田市・地域史研究集会

講演者と(本島和人さん撮影・森武麿さんから)

 2011年8月27~28日、飯田市歴史研究所「第9回 飯田市地域史研究集会」が開催されました。  総合テーマは「戦後復興から高度成長へ-飯田・下伊那の経験」と題されていました。企画そのものは、ずいぶん前から計画されていましたが、講演者・参加者には「3・11 東日本大震災」、そして震災からの「復興とは何か?」という問いが念頭にあったと思います。  1日目のプログラムは次の通りです。 講演 大門正克「戦後復興と高度成長を生きる-移動と暮らしの視点から」 講演 小林恭之助「敗戦前後から高度成長を生きた一教員の経験」  小林さんの話しは、戦前戦時の経験から始まり、学習指導要領の変遷と地域での教育実践を対比させながらこの地域と時代を論じたものでした。「写真」が効果的に利用されていたことが印象に残ってます。このことは、大門さんが強調された現代史=同時代史の「記録」としての「写真の活用」といった問題と共通します。大門さんの話しも、岩手や沖縄の人びとの記した作文(文字)を読み解くと同時に、「写真」(とその撮影者)の持つ意味を大事にしたものでした。

「ひとりの母の記録」にも登場する山吹村下平駅

 2日目(8月28日)は、私の「映画「ひとりの母の記録」と山吹村」と題した報告が行われました。コメントとして、映画撮影時、山吹村公民館長であった宮下功さんのご子息・道彦さんのお話しがありました。関係各位の協力で「ひとりの母の記録」を上映することも出来ました。  宮下道彦さんには数年来、自宅所蔵の文書を調査させていただいていますが、その成果を示すよい機会となりました。「ひとりの母の記録」は、伊那谷の養蚕農家の主婦に焦点をあてた「社会教育映画」(「記録映画」かどうかをめぐって論争がある)、岩波映画製作、1955年短篇映画部門で『キネマ旬報』第1位をとった作品です。ここに描かれた農村の諸問題と、撮影地・山吹村の文化状況、文化運動を対比的に論じてみようというのが私の報告のねらいでした。  特に、公民館を中心に展開しはじめていた地域婦人会を主体とするものや、天竜社労組や青年団との交流のなかで生まれ始めていた生活記録の作品と対比させ、一方、県下ではじめて原水協が結成されたという社会運動の展開をも地域史的背景として視野に入れようと試みました。報告では、映画製作過程(シナリオ段階)と地域社会での反響を論じるに止まりましたが、こうした文化(映画)史のテキスト分析と地域社会史をつなぐ試みでもあります。  宮下道彦さんのお話しは、同時代経験のみならず、山吹村の公民館活動・青年団運動はじめとする教育文化史、そして宮下功さんのことを理解するうえでも大変貴重なものとなりました。  史料閲覧でお世話になった宮下道彦さんとそのご家族、報告の機会を与えて下さった飯田市歴史研究所の皆様、集会参加者の皆様に御礼申し上げます。

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