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おおぐし じゅんじ

大串 潤児

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戦争をどう表象するか?-08・秋・甲府

戦争をどう表象するか?-08・秋・甲府

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甲府連隊営門・碑。


2008年10月11日から山梨県甲府市を訪ねました。国立歴史民俗博物館共同研究「20世紀における戦争Ⅱ」の調査のためです。

※前回の「20世紀における戦争Ⅱ」にかかわる山梨研究会の模様については以下をご覧下さい。
http://fan.shinshu-u.ac.jp/kyouin/ogushi/archives/2008226.html

今回は、1)07年5月、市民の立場から手作りの平和博物館を、との趣旨で開館した「山梨平和ミュージアム」を、2)山梨大学に残る旧甲府・歩兵 第49連隊赤レンガ建造物、3)甲府市周辺の戦争展示、を見学することが目的でした。また「山梨平和ミュージアム」では、甲府空襲・歩兵第49連隊(第 149連隊)と甲府、といった問題について、同ミュージアム理事長の浅川保さんからレクチャーを受けました。

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山梨平和ミュージアム。


「平和ミュージアム」1Fは、1)甲府空襲を、市民の側から、アメリカ側から、また戦略爆撃の思想の流れのなかに位置づけたスペース、2)地域と戦場に 視点をあてた「甲府連隊の軌跡」[中国大陸での歩兵第149連隊による毒ガス戦の記録も展示されていました]、3)「戦時下の暮らし」、で構成されていま す。2Fは、山梨出身の思想家・石橋湛山の記念館です。全国でもここだけだそうです。そのほか、市民が提供した回顧録や資料などを展示する「わ・た・し  の展示」スペースがあり、市民参加型の平和ミュージアムという性格をよく表現していました(概要は「山梨平和ミュージアム ご案内」、会報『平和の港』な どから)。

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2F「石橋湛山記念館」にて浅川さんの解説。


昼食後、建築士の久保田要さんの案内で山梨大学附属中学校庭に残る赤レンガ建築物見学に向かいました。この建築物は、かつて歩兵第49連隊の「糧秣庫」 であったそうです。現在は、内部スペースの1/3を山梨大学人間教育学部の歴史資料室[ちょっとした博物館]に、2/3は各種イベントが開催できるホール として利用されています。


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山梨大学赤レンガ館。


信州大学にも、こちらより少し小さいですけれども旧歩兵第50連隊関連の赤レンガ建築物があります。大学内におけるこうした建造物の保存・利用についても久保田さんのお話しはたいへん参考になりました。

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久保田さんがていねいに赤レンガ館内部の構造を説明してくださいました。

甲府駅近くで久保田さんとわかれ、そのまま国道を東に向かい春日居(現在は笛吹市春日居)を訪ねます。笛吹市春日居郷土館は、合併前の「春日居町 郷土館」の時代から毎年夏に「わが町の八月十五日展」を開催してきました。町民からの資料の提供をうけ、長年持続している企画です。こうした企画の意味に ついて末館長から熱のこもったお話しを聞くことができました。
併設されている小川正子[ハンセン病療養所・長島愛生園の医師、戦時期には映画作品化もされた『小島の春』の作者、この地出身で春日居町名誉町民第1号]記念館を見学、正子の姪にあたる吉原さんがお話しをして下さいました。

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共同研究のメンバーとは別に、時間をみつけて山梨県立文学館および県立図書館を訪ねました。
戦時期の山梨県については、『山梨県議会史』第5巻がまとまった叙述ですが、最近、以下のように研究が進んでいる様子を確認することができました。

・浅川保「今、なぜ戦争遺跡なのか」『甲斐ヶ嶺』42、1998・12
・松本武彦「アジア太平洋戦争下山梨県の軍事史的位置」『山梨の歴史教育』7、1999・7
・山梨県戦争遺跡ネットワーク編『山梨の戦争遺跡』山梨日日新聞社2001
・佐藤弘『山梨のアジア太平洋戦争』山梨ふるさと文庫2005


また山梨県立文学館では「中村星湖展」図録を手にすることができました。農民文学にも関係した星湖は1940年、富士山麓にて富士五湖地方文化協会を結 成、雑誌『五湖文化』を創刊、郷土文化運動・農民文藝運動を展開します。それらは『文化は郷土より』(1943年、大智書房)にまとめられています。山梨 の戦時下文化運動の一側面を知ることができました。20-30年代、甲府-山梨モダニズムを、より地域から一つのてがかりです。

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山梨県立文学館。

今回の調査では、「山梨平和ミュージアム」の浅川保さん、久保田要さん、春日居郷土資料館の末利光館長さんほかに御世話になりました。

 

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