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おおぐし じゅんじ

大串 潤児

歴史学 教授

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戦後小田原地域における文化運動・社会運動

2006年6月3日(土)、東海大学・山本和重さんのお招きにあずかり、「地域史を堀おこす」第8回の講演者として「戦後小田原地域における文化運動・社会運動」と題した講演を、東海大学にて行ってきました。
遠山茂樹さんによる「歴史の掘りおこし」運動と民間史学、西さがみ地域の伝統ある在野歴史学に学びつつ、(1)戦時戦後の青年文化運動の概要、(2)足柄下郡下曽我村における「新しい青年運動」、(3)富士フィルム労働組合運動の特徴、の3点にわたって話しをしました。

 

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小田原市立図書館所蔵の青年団報(下曽我青年会「夜明」、小田原市青年団連盟「蟻之塔」など)。

 

とくに、下曽我青年会の共同学習・生活記録運動では、「出稼ぎ者」の調査と生活記録作成(完成品を東北出稼ぎ者出身地への送付)・地域青年との交 友関係、の意味を考え、また富士フィルム労働組合運動の特徴では、新制高校卒業生の大量就職の社会史的意味、戦後の労働運動では珍しく、男女平等賃金を主 張し、かつ本工(正社員)組合が臨時工組合を結成・支援することの意味などを考えました。総じて出来合の「戦後史」では明らかにならない、地域における 「他者」との連帯の可能性をさぐったものでした。
会場からは活発な質問や意見が出され、私としても大変勉強になりました。特に、小田原近在の在野の歴史家たちと知遇をえたことが大きかったと思います。 民衆文化というよりは、知識人中心の文化が多いこと、在日韓国・朝鮮人の問題を視野に入れなければならないこと、「出稼ぎ者」との交流は小田原地域にとっ ては「あたりまえ」のことでそこには差別意識などはなかったこと(方言もあたりまえに許容していたという)、など検討すべき宿題を頂きました。
東海大学日本史教室のみなさま、講演にご参加くださったみなさまに御礼を申し上げます。
なお、この講演の概要の1部は、大串潤児「1950年代、小田原地域における青年団運動と「青少年年」」・科学研究費補助金成果報告書『1950年代地 域史の総合的研究』(森武麿編)に収録されています。生活記録と移動する人びとの生活感情、地域社会と労働者・企業、長野県の事例でも注意をしてみたいと 思います。

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