教員紹介

もりやま しんや

護山 真也

哲学・芸術論 教授

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第2回因明科研研究会&拡大プラジュニャーカラグプタ研究会

第2回因明科研研究会

 3月26日、東京学芸大学にて13:00より17:30まで、第2回因明科研研究会が開催れました。  今回は、東京学芸大学の稲見正浩先生に、会場準備その他でお世話になりました。ありがとうございます。  冒頭、桂紹隆先生より、中国の復旦大学におけるインド学・仏教学研究、中でも因明研究の隆盛について報告がありました。逸文などを利用した『因明正理門論』(漢訳)の校訂テキストの作成も計画されているようで、それを土台にインド仏教論理学の研究ともリンクする日は近いでしょう。ただ、懇親会のときに話題に出ていましたが、中国・韓国など儒教の伝統が強いところでは、自分の先生の批判をすることが許されないようで、そのあたりは学問の発展という点からはどうなのか、微妙なところです。  続いて、小野基先生とオーストリア科学アカデミーの室屋安孝さん、渡辺俊和さんのグループによる『集量論注』第6章の研究成果に付随する、『正理門論』「誤難」セクションの解読研究が披露されました。漢訳でのみ伝わるディグナーガの『正理門論』のサンスクリット・テキストを『集量論注』ならびにそこから復元可能な『集量論』のサンスクリットと比較しながら、想定してみる、という作業です。このとき、私たちは果たして、その信頼度の高いサンスクリット語テキストをベースにして議論を捉えるべきなのか、それとも漢訳を漢訳として考えるべきなのか、という厄介な問題に直面します。この点について、ディグナーガの考えを知るためにテキストを読む、というスタンスを強調されたのが桂先生です。もう片方では、敢えて漢訳ならびに東アジア因明文献の伝統を独立したものと考え、その価値を追求するという道もあるのかもしれません。インドから東アジアへと伝播した仏教の流れまで視野に入れると、仏教とは何か、―お釈迦さまが見たものが最重要なのか、伝統の中で新たに見出されたものにも価値を認めるべきか―という問題や、仏教を理解するために言語の相違(サンスクリット語と漢訳)はどう調停されるべきなのか、という問題とも密接にむすびつきます。  

沙門宗の注釈

 「誤難」セクションの途中からは、現在、師茂樹先生が研究されている沙門宗による『正理門論』注釈も検討の俎上にあがりました。円測や定賓といった学僧たちが、この難解なテキストを理解しようと詳細な議論を展開していることが分かり、『集量論』に比べれば、インドではそれほどの影響はなかったかもしれない、このディグナーガの著作が東アジアでは大きな影響力をもっていたことに感動を覚えてしまいました。  また、室屋安孝氏は、『日本古写経研究所研究紀要』創刊号に掲載された論文「漢訳『方便心論』の金剛寺本と興聖寺本をめぐって」の内容を紹介され、同様にして『正理門論』についても日本古写経の中に貴重な資料があることを報告されました。  インド仏教研究者・インド哲学研究者をはじめ、総勢25名ほどの参加者とともに、インドと東アジアという二つの伝統が交わるところで、相互の交流が深められたことは大きな成果だったと思います。また、この科研が目指すところもすこしづつ見えてきました。

拡大プラジュニャーカラグプタ研究会

 続く27日と28日の両日は、拡大プラジュニャーカラグプタ研究会で、稲見正浩先生が中心となりながら、プラジュニャーカラグプタの『プラマーナ・ヴァールッティカ・アランカーラ』(量評釈荘厳)の知覚章、第3-4偈に対する注釈個所の検討を行いました。今回は、因果関係というものは、存在するものについて成り立つものか、存在しないもの(非存在)について成り立つものか、という観点から、インド哲学特有の無(非存在)をめぐる考察が続きました。粘土から壺ができあがるとき、原因にある粘土には、〈壺の未生無〉、つまり、壺が無いことが同時に成立していると考える人たちがいます。プラジュニャーカラグプタは、その未生無とは結局、原因の存在と同じことではないか、だとすれば因果関係を考えるときに、あえて無のことを想定する必要があるのか、ということについて思索をめぐらせていきます。「存在」や「無」という語が飛び交い、時間がたつと、何が何だかわからなくなる議論です。  また、松岡寛子氏は、このプラジュニャーカラグプタの著作に対するヤマーリ注について、ヤマーリについてのチベットの伝承、ヤマーリ注の著作の呼称問題、プラジュニャーカラグプタの著作の呼称問題を論じました。様々な資料をまとめてもらい、非常に有益でした。ぼちぼち、『アランカーラ』の名前にしなければいけない、と思いはじめました。PVABhの略号を捨てる日も近そうですねぇ。  関係の皆様、本当にありがとうございます。刺激にあふれた三日間でした。

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