教員紹介

もりやま しんや

護山 真也

哲学・芸術論 教授

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ヤマーリ研究会@ライプチヒ大学

ライプチヒへ

 2015年12月14日から18日まで、5日間の日程でライプチヒ大学を訪問しました。訪問の目的は、エリ・フランコ先生が中心となって進めているヤマーリによる『認識論評釈荘厳』に対する注釈のサンスクリット語校訂テキスト作成の現場に立ち会うことです。  ところで、ヤマーリって誰?――はい、お答えします。

ヤマーリ注のこと

 ヤマーリは11世紀中葉に活躍したとされるインド仏教の学匠です。  彼はダルマキールティの『プラマーナ・ヴァールッティカ』(認識論評釈)に対する、プラジュニャーカラグプタの浩瀚な注釈『プラマーナ・ヴァールッティカ・アランカーラ』(認識論評釈荘厳)に対して詳細な複註を著述しました。それは『プラマーナ・ヴァールッティカ・アランカーラ・ティーカー』(認識論評釈荘厳複註)と呼ばれ、別名、『スパリシュッダー』(極清浄)とも呼ばれます。  このテキストは、これまでチベット語訳のみが伝えられていましたが、フランコ先生のDFGプロジェクト(Jujie Chu氏とXuezhu Li氏との共同研究)では新出サンスクリット語写本に基づいて、この大部の注釈の校訂が試みられています(写本は「プラマーナ・シッディ」章に対する注釈個所をカヴァーする模様。ただし最初の数葉を欠き、写本の端などが破損しているところもあるらしい)。  「ヤマーリ」の名は一般にはまるで知られていませんし、インド仏教研究者でも、プラジュニャーカラグプタの研究者以外にはまず知られていない存在だと思います。そのごく一握りの奇特な研究者が、今回の訪問団のメンバーです。稲見正浩、狩野恭、小林久泰、志田舞、松岡寛子、そして私の六名で、その冒頭部の校訂テキストの解読に立ち会いました。

待望のサンスクリット語テキスト

これから研究が発表されるところですから、ここではその内容紹介は省略します。研究会は、校訂テキストとフランコ先生の英訳(試訳)を下敷きにしながら、「著作の目的」(prayojana)や「著作の主題」(abhidheya)などをめぐる複雑な議論を皆で検討するスタイルで進められました。途中、Chu氏と松岡氏とが関連するテーマについて発表を行う場面もありました。  これまでプラジュニャーカラグプタの難解なテキストを読むとき、ヤマーリの注釈(チベット語訳)に助けられてきたことを思うと、そのサンスクリット語が近い将来に見られる、ということに感激せずにはいられません。もう続編は無理だろうと思われていた『スターウォーズ』の新作が登場したことに対するファンの気持ちに譬えれば、少しは理解してもらえるでしょうか。  私にとっては、ヤマーリ注の方がはるかにフォースの覚醒を促してくれそうな気がしますが…。

クリスマス・シーズンのライプチヒ

 ともあれ、朝10時から夜の7時までみっちりとヤマーリ注と格闘した5日間でした。  昼食と夕食のときには、フランコ先生にライプチヒでお薦めのレストランなどへ連れて行ってもらいました。  この季節、ヨーロッパの街はどこもクリスマス市で盛り上がります。ライプチヒの伝統あるクリスマス市はドイツでも有名で、アウグストゥス広場やニコライ教会の近くには、お菓子や手作りの小物、グリューワインやソーセージなどを提供する屋台がひしめきます。メリーゴーランドもあり、大人の方が楽しんでました。  また、信州大学から交換留学でライプチヒで学ぶ学生も我々一行と夕食を共にする機会がありました。昔の教会を改築して建てたという非常にモダン(あるいは近未来的)なライプチヒ大学の校舎内を案内してもらい、その斬新な意匠に驚かされました。  その校舎のすぐ近くに、ライプチヒの街を一望できるパノラマ・レストランがあります。皆で写真を撮りつつ、歓談しました。食事も美味しくいただきました。  また近い将来、このメンバーと今回、参加できなかった方々もふくめ、ヤマーリ注解読の機会ができたらよいな、と考えております。なお、この写本の詳しい情報は、来年夏に開催される第6回北京国際チベット・セミナーで報告されるようです。

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