教員紹介

もりやま しんや

護山 真也

哲学・芸術論 教授

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第16回 国際サンスクリット学会に参加して(1)

バンコクへ

 タイ王国の首都バンコクにて、6月28日(日)より7月2日(木)まで、第16回国際サンスクリット学会が開催されました。  私は28日の午前の便でタイへ出発し、現地時間の2時30分頃に空港へ到着。飛行機の中で入国カードを受け取らなかったために、ちょっと難儀しましたが、なんとか無事に到着。空港の名前はスワンナプーム、英語表記ならSuvarnabhumi、「黄金の大地」という意味。その名の通り、バンコクの寺院には黄金色のブッダが並び、寺院の屋根にも様々な宝石が煌めいています。仏教寺院の数々が黄金色に輝く街です。  空港から列車(City Line)とスカイトレイン(BTS)を乗り継ぎ、目指すチット・ロム駅(Chit Lom)へ。湿度が高い上に気温も高いので、独特の熱気がたちこめ、汗が噴き出てきます。会場はバンコク随一の高級ホテル、ルネッサンス。「なんで学会会場をホテルにしたんだろう?」と知り合いに聞いてみると、「セキュリティ上の理由からじゃないかな」と言ってました。政情不安定な時期もあったことも考えると納得です。  ホテル入り口にはものものしい警備と人だかり。この学会はインド政府とタイ王室との援助で開催されており、本日は王女が開会式にも参加していた模様。  

晩餐会

 受付をすませて、まずは「仏教学」のセクションへ。通例、学会の発表には司会者(Chairman)がつきものですが、そこではなんと司会者なしで発表が進められています。発表者が自分で時間を測り、発表をしては次の人にバトンタッチする、というスタイルです。(このあたり、セクションを統括する人の力量が大きく左右するようで、文法学の部会など順調に進んだところもあります。)  ウィーンのプレッツ博士等、何人かの知り合いに再会し、懇親会へ。懇親会はインドの女性外務大臣スシュマ・スワラージ氏の招待によるもので、主賓としてタイ王国の王女が招かれていました。スワラージ氏はサンスクリット語の素養もあり、スピーチではサンスクリットを交えた挨拶がなされました。「国立大学に文学部はいらない」などと言っている極東の国からは、こういう大臣が生まれることはないでしょうね。  学会参加者のみなさんの多くも正装での参加。私はというと、招待状すら持たず、バックパッカーのようなラフな格好のままでしたが、インド人研究者の集団に紛れ込んだのが幸いしたのか、なぜかフリーパスで入れてもらえました。  タイの民族舞踊などが催される中、旧知の仲間たちと近況を語りながら、初日は終わりました。

学会2日目

 4時半、起床。7時から朝食。すぐさま、会場へ移動。なにしろ8時から発表がはじまるので、朝はバタバタです。  まずは「仏教学」部会へ。この日は、途中から悠々と司会者が登場したまではよかったのですが、この司会者がなぜか質問をほとんど受け付けず、それぞれの発表をさっさと終わらせよう、とするひどいありさま。発表者にとっては聴衆の反応が何よりも気になるところなのに、それが十分に受け付けられないのは悲しいものがあります。  かたや下の階の「哲学」パネルでは、発表者が時間を守らず延々と話したのち、さらに質問もすべて受け付ける、という真逆のスタイル。これはこれで困ったものです。いくつかの部会を往復しながら、聞きたい発表を組み合わせて自分なりの予定を立てても、こういう発表時間がずれこむ部会があると台無しになりますから。  夕食は最近タイ王国のマヒドン大学で教鞭をとられている張本研吾氏、九大の片岡啓氏、ラトナーカラシャーンティの『サーラタマー』の研究者Gregory Seton氏、マンダナミシュラの研究者Hugo David氏, 仏教認識論の研究者Patrick Mcallister等とともにモダンなビルの中にあるタイ料理のレストランでいただきました。

29日に聴講した発表

Constanze Pabst von Ohhin: āśrayaparāvṛtti theory in the Mahāyānasūtrālamkāra ant its commentaries Cristina Pecchia: Some reflections on methodological questions in the study of Dharmakīrti Giacomo Benedetti: The figure of the forest hermit and the practice of tapas in the Mahāvastu and the Pāli canon Hiroko Matsumoka: Kamalaśīla on the logica reason: sahopalambhaniyama re-examined Hiroshi Nemoto: On the term dharmakāya Kiyotaka Yoshimizu Paramātman and the jñānakarmasamuccayavāda Huanhuan He: Dignāga’s early logic? Once again on the Hetucakraḍamaru Rafal Kleczek: Authority and religion in Bhāsarvajña’s Nyāyabhūṣaṇa. Jowita Kramer: The eighteen manaskāras in the Mahāyānasūtrālaṃkāra and its commentaries David Hugo: Cognition without an object? Maṇḍana Miśra on the epistemological value of intuition (pratibhā/prātibha) Akane Saito: Perception of the word in the Brahmasiddhi of Maṇḍanamiśra Yasutaka Muroya: Vācaspati Miśra as the source for textual criticism of the Nyāyabhāṣya Suguru Ishimura: On the Bhāṭṭa school’s concept of cognizedness (jñātatā)

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